スピッツ「猫になりたい」の歌詞の考察を行います。
この曲は、1994年にリリースされたシングル「青い車」のカップリング曲として発表されました。
アルバムでは、シングルのカップリングや他アーティストへの提供曲を集めた「花鳥風月」に収録されています。
このアルバムは、1999年にリリースされました。
ちなみに、現在は、「花鳥風月+」といって、インディーズ時代の曲が4曲追加されたものが販売されているようです。
スピッツのインディーズ時代の音源を聞けるのは、なかなか貴重だと思います。
いわゆる、スピッツの「マイナー曲」を集めたアルバムではありますが、実は、かなり良いアルバムです。
このアルバムを聴くと、「シングルのカップリング曲であっても、スピッツは本当に良い曲を作るな」と感心します。
カップリング曲であっても、手を抜いていないことがわかります。
ちなみに、2002年にリリースされたスピッツのトリビュートアルバム「一期一会」では、つじあやのさんがこの曲をカバーしています。
つじさんの「猫になりたい」は、素朴で良い感じのカバーになっています。
ちなみに、この「一期一会」は、もう新品では売っていないので、買うとしたら中古になります。
「猫になりたい」は、シングルのカップリング曲なので、一般的には、あまり有名な曲ではありません。
しかし、スピッツファンの中では、昔から根強い人気がある曲です。
「この曲がスピッツの曲の中で一番好き」というファンの人もいるくらいです。
まさに、「隠れた名曲」といった感じの曲です。
メロディも素晴らしいですし、何より、歌詞が本当に素晴らしいと感じます。
そこで今回は、「猫になりたい」の歌詞を考察して、隠された意味を探っていきます。
この曲の作詞・作曲者は、草野マサムネです。
歌詞の全文は、下記のサイトで見られます。
「猫になりたい」の歌詞の考察
1番のAメロの歌詞
まずは、1番の歌詞を見ていきます。
灯りを消したまま 話を続けたら
ガラスの向こう側で 星がひとつ消えた
からまわりしながら 通りを駆け抜けて
砕けるその時は 君の名前だけ呼ぶよ
『灯りを消したまま 話を続けたら』というのは、「部屋で誰かと話し続けていたら、暗くなって、そのまま話を続けた」ということでしょうか?
この曲の主人公には、「長い時間、話ができる人」がいるようです。
『からまわりしながら 通りを駆け抜けて』とは、どのような意味でしょうか?
自分の解釈だと、「社会に出て、色々もがきながらも、空回りしている」といったような意味ではないかと思います。
そして、その後、『砕ける』という歌詞もあるので、社会の中で、なかなかうまくいっていないと推測することができます。
ただ、そんな時でも『君の名前だけ呼ぶ』と言っています。
このことから、この主人公には、「辛い時の支えになるような、大事な人がいる」ということがわかります。
1番のBメロの歌詞
1番のBメロの歌詞も見ていきます。
広すぎる霊園のそばの このアパートは薄ぐもり
暖かい幻を見てた
『広すぎる霊園のそばの このアパートは薄ぐもり』とありますが、ここに出てくるのは、主人公のアパートでしょうか?
または、『君』のアパートでしょうか。
どちらにしても、陰気な場所にあるアパートと言えます。
ただ、そんなアパートの中でも、『暖かい幻』を見ていたようです。
その幻がどのようなものか、この歌詞だけでは、よくわかりません。
ただ、なんとなく、これは『君』のことかなと推測できます。
1番のサビの歌詞
1番のサビの歌詞も見ていきます。
猫になりたい 君の腕の中
寂しい夜が終わるまで ここにいたいよ
猫になりたい 言葉ははかない
消えないようにキズつけてあげるよ
『猫になりたい』という歌詞に対して、「わかる」と共感する人も多いでしょう。
飼い猫は、1日の大半を寝て過ごし、時々、人に甘えたりします。
そんな姿を見て、「うらやましい」と感じ、「自分も猫になりたいな」と思う人は沢山います。
ここで言う『猫』は、おそらく、「『君』が飼っている猫」のことだと思われます。
主人公は、きっと、「呑気に、『君』に甘えている猫」を見て、うらやましくなったのでしょう。
それで、『猫になりたい』という気持ちが湧いてきたのだと思います。
また、歌詞に出てくる『ここ』というのは、『君の腕の中』のことを指しているのでしょう。
つまり、「一晩中、君の腕の中で眠りたい」と言っているということです。
そして、猫が言葉を使わずに『君』とコミュニケーションしているのを見て、主人公は、『言葉ははかない』と感じたのでしょう。
このことから、主人公は、「『君』と、言葉ではないコミュニケーションがしたい」と思ったと推測できます。
次の、『消えないようにキズつけてあげるよ』という歌詞は、なんとも草野さんらしい独特な表現ですね。
これは、「好きな人にいたずらをして、ちょっと困らせたい」ということではないかと思います。
猫は、時々いたずらをして、爪で飼い主を傷つけてしまうことがあります。
それを見て、主人公は、「自分も、猫みたいに『君』にいたずらをして、少し困らせたい」という気持ちが湧いてきたのかもしれません。
これは、「小学生の男子が、好きな子に対していじわるをする感覚」に近いのではないかと思います。
2番のAメロの歌詞
2番のAメロの歌詞も見ていきます。
目を閉じて浮かべた 密やかな逃げ場所は
シチリアの浜辺の絵ハガキとよく似てた
『目を閉じて浮かべた 密やかな逃げ場所』という歌詞を見ると、主人公は、「心の中に逃げ場所を持っている」ことがわかります。
きっと、現実が辛いせいで、心の中に逃げ場所を作るようになったのでしょう。
そんな心の逃げ場所は、『シチリアの浜辺の絵ハガキ』のような、とてもきれいな場所のようです。
現実は、汚い部分が多かったりするので、心の中ではきれいな場所を想像してしまうのかもしれません。
2番のBメロの歌詞
2番のBメロの歌詞も見ていきます。
砂ぼこりにまみれて歩く 街は季節を嫌ってる
つくられた安らぎを捨てて
『砂ぼこりにまみれて歩く』という歌詞を見ても、主人公が厳しい現実を過ごしていることがわかります。
次の、『街は季節を嫌ってる』という部分は、解釈が難しい箇所です。
ただ、自分の解釈では、この歌詞は、「街は、春のような安らげる季節が来ることを嫌っている」という意味ではないかと思います。
きっと、主人公の心の中は、「常に冬」といった感じなのでしょう。
春が訪れる気配がないので、主人公は、「街は、冬の次の季節が来るのを嫌っている」と思ってしまったのかもしれません。
『つくられた安らぎを捨てて』という歌詞も、なかなか解釈が難しい部分です。
ただ、自分としては、「今の自分の現状は辛いけれど、安易に辛さを紛らわすことはしない」という意志表明ではないかと思います。
世の中には、「辛さを紛らわす方法」は沢山あります。
ただ、中には、「一時的には辛さが紛れるが、根本的な辛さを解消することができないもの」もあります。
主人公は、「そういった、安易に辛さを紛らわすことはしない」と言っているのだと思います。
そのかわり、「本当の安らぎ」を追い求めている感じがします。
そして、その「本当の安らぎ」というのは、「『君』と一緒に過ごすこと」で得られると感じているのではないでしょうか。
まとめ
スピッツ「猫になりたい」の考察をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
この曲は、「猫になりたい」というタイトルですが、果たして、この曲の主人公は、「猫になりたい」と強く望んでいたのでしょうか?
自分としては、それほど強く「猫になりたい」と望んでいたようには思えません。
主人公は、きっと、猫になりたいというより、「『君』と恋人になって、甘えたい」と思っていたのです。
それができれば、「別に猫になれなくても構わない」と考えているはずです。
主人公と『君』は、きっと、まだ恋人同士ではないはずです。
なぜなら、もう既に恋人同士ならば、猫にならなくても『君』に甘えられるので、「猫になりたい」と思う必要もないからです。
恋人として甘えられないからこそ、「猫になって甘えたい」と思っているのでしょう。
主人公と『君』は、長時間部屋で話していることから、ある程度、親しい関係ではあるようです。
きっと、「友達以上、恋人未満」くらいの関係なのではないでしょうか。
ただ、主人公は、「君に触れたいのに、恋人にはなれていない」ということに対して、非常にもどかしさを感じていると思います。
そのため、この曲を聴くと、「大好きな人がいて、よく話はするけれど、恋人にはなれていない時のもどかしさ」を思い出してしまいます。
ただ、そういったもどかしさも、この曲の大きな魅力になっていると思います。
この歌詞で描かれているもどかしい感じは、「恋」の素敵な部分の一つだったりするので。