しょうの雑記ブログ

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スピッツ「君が思い出になる前に」の歌詞の考察

 スピッツ「君が思い出になる前に」の歌詞の考察を行います。

 

 この曲は、1993年に、アルバムからのリカットシングルとしてリリースされました。

 

 オリジナルアルバムでは、1993年にリリースされたアルバム「Crispy!(クリスピー)」に収録されています。

 

 

 また、ベストアルバムにも収録されています。

 

 

 「Crispy!」がリリースされた当時、スピッツは「売れたい」ともがいていました。

 

 そのため、「Crispy!」というアルバムはスピッツの中では、ポップでわかりやすい曲が多く収録されています。

 

 この、「君が思い出になる前に」も、スピッツとしては、かなりわかりやすい曲になっています。

 

 なんとなく、「売れ線を狙って作った曲」という印象があります。

 

 ただ、だからといって、「良くない曲か」と言われたら、全くそんなことはありません。

 

 とても完成度が高く、素晴らしい曲だと思います。

 

 歌詞も、スピッツの中では、だいぶわかりやすくなっています。

 

 ただ、よくよく見ていくと、「草野さんならではの表現」が散りばめられていて、わかりやすい中にも深みのある歌詞となっています。

 

 そこで今回は、一見わかりやすい歌詞の中に隠された意味を探っていきます。

 

 この曲の作詞・作曲者は、草野マサムネです。

 

 歌詞の全文は、下記のサイトで見られます。

 

www.uta-net.com

 

 

 

 

 

 

 

「君が思い出になる前に」の歌詞の考察

1番のAメロの歌詞

あの日もここで はみ出しそうな 君の笑顔を見た

水の色も風のにおいも 変わったね

明日の朝 僕は船に乗り 離ればなれになる

夢に見た君との旅路は かなわない

 

 最初の『はみ出しそうな 君の笑顔』というのは、なかなか面白い表現です。

 

 これは、「顔からはみ出してしまうくらいのインパクトがある、素敵な笑顔」という意味ではないかと思います。

 

 続く、『水の色も風のにおいも 変わったね』というのは、「今までと生活が変わって、物事の感じ方が変わってしまった」ということではないでしょうか。

 

 『明日の朝 僕は船に乗り 離ればなれになる』ということから、この主人公の男性は、明日、船に乗って、遠いところに行ってしまうようです。

 

 そして、『君』とも離ればなれになってしまうとのことです。

 

 『夢に見た君との旅路は かなわない』とは、どういう意味でしょうか?

 

 これは、「『君』と夢見た将来は、もう実現することができなくなった」ということではないかと思います。

 

 1番のAメロの歌詞を見ただけで、「男女の別れ」の雰囲気が強く漂ってきます。

 

1番のBメロの歌詞

きっと僕ら 導かれるままには

歩き続けられない 二度と これからは

 

 『導かれるまま』とありますが、これは、誰の導きのことを指しているのでしょうか?

 

 これはおそらく、「神の導き」だと思います。

 

 この主人公はきっと、「運命の人と会って、神に導かれるまま、その人と結ばれる」ことを願っていたのでしょう。

 

 しかし、別れが来て、「神の導くままに進むことができない」と強く感じたのでしょう。

 

1番のサビの歌詞

君が思い出になる前に もう一度笑ってみせて

優しいふりだっていいから 子供の目で僕を困らせて

 

 ここの部分も、なんとも切なくなる歌詞です。

 

 『君が思い出になる前に』というのは、「離れ離れになって、会えなくなる前に」ということでしょう。

 

 主人公は、直接会うことができるうちに、目の前で、笑ってほしいと願っています。

 

 『優しいふりだっていいから』というのも、なんとも胸をしめつけられるようなフレーズですね。

 

 この主人公は、もう『君』が、自分に対して恋愛感情が無くなっていることをよくわかっています。

 

 ただ、それでもなお、「優しく接してほしい」と思っています。

 

 それが本心ではなかったとしても、『君』が優しく接してくれるだけで嬉しいのでしょう。

 

 『子供の目で僕を困らせて』という歌詞を見ると、『君』は、きっと、無邪気で、純粋な心を持っているのでしょう。

 

 そして、主人公は、そういうところが好きだったのだと思います。

 

 『子供の目で僕を困らせて』というのは、「もう一度、自分の前で、無邪気な姿を見せてほしい」ということだと思います。

 

2番のAメロの歌詞

ふれあう度に嘘も言えず けんかばかりしてた

かたまりになって坂道を 転げてく

追い求めた影も光も 消え去り 今はただ

君の耳と鼻の形が 愛おしい

 

 この部分に、「二人がうまくいかなくなった原因」が書かれています。

 

 『ふれあう度に嘘も言えず けんかばかりしてた』ということなので、おそらく二人は、自分に素直で、「優しい嘘」を言うことが苦手だったのではないでしょうか。

 

 恋人同士でも、違う人間ですから、どうしても「合わない部分」も出てきます。

 

 例えば、彼女が料理を作って、彼女自身は「この味は凄くおいしい」と思っていたとします。

 

 しかし、彼は「あまりおいしくない」と思うこともあります。

 

 そんな時、「優しい嘘」をついて、「おいしいよ」と言える人もいます。

 

 ただ、この主人公と『君』は、それができなかったのだと思います。

 

 「優しい嘘」であっても、それは自分の本心を偽ることですから、苦しいことです。

 

 お互いに「優しい嘘」が言えずに、本音を言い合っていたため、けんかが絶えなかったのでしょう。

 

 『かたまりになって坂道を 転げてく』というのは、「二人の関係がどんどんうまくいかなくなる」ことの例えだと思います。

 

 『追い求めた影も光も 消え去り』というのは、「二人で夢見ていた将来の姿も、もう想像できなくなった」ということでしょう。

 

 そして、『君の耳と鼻の形が 愛おしい』という歌詞に、草野さんの持つ「変態性」や「フェチな部分」が垣間見えます。

 

 誰でも、「恋人の、ここが好き」という体の部分があると思います。

 

 ただ、「耳と鼻の形」と聞くと、「数ある体のパーツの中で、そこが好きなの?」と意外に感じてしまいます。

 

 こういう歌詞を見ると、「やっぱり草野さんは変態だな」と思ってしまいますね(笑)。

 

2番のBメロの歌詞

忘れないで 二人重ねた日々は

この世に生きた意味を 越えていたことを

 

 『二人重ねた日々』という歌詞がありますが、これはどういう意味でしょうか?

 

 ぱっと思いつくのは、「唇を重ねた」という意味と、「体を重ねた」という意味です。

 

 そう考えると、『二人重ねた日々』というのは、「恋人として、唇や体を重ねた日々」と言い換えることができます。

 

 ただ、こう言うと、生々しさが出てきてしまいます。

 

 それに対して、『二人重ねた日々』と言うと、だいぶ生々しさが薄れます。

 

 性的な内容が含まれた歌詞になっていますが、それを、生々しさのさないきれいな言葉で表現できるのは凄いと思います。

 

 また、『重ねた』という言葉には、体だけでなく、「心を重ねた」という意味も含まれているでしょう。

 

 多くの人が、恋人と体を重ねることで、「二人の心が通じ合った」という瞬間を体験していると思います。

 

 そういった瞬間のことも、きっとこの歌詞に入っているはずです。

 

 その証拠に、その後に、『この世に生きた意味を 越えていた』という歌詞が続きます。

 

 これは、「彼女と、体も心も通じ合って、この世に生きた意味を超えるような素晴らしい体験をした」ということです。

 

 「体だけの関係」では、なかなかここまでの気持ちにはなりません。

 

 そのため、きっと『重ねた』という歌詞には、体だけではなく、「心」も含まれています。

 

 この部分は、本当に深い歌詞ですね。

 

 改めて、草野さんは、本当に優れた作詞家だなと感心します。

 

2番のサビの歌詞

君が思い出になる前に もう一度笑ってみせて

冷たい風に吹かれながら 虹のように今日は逃げないで

 

 『冷たい風に吹かれながら』とありますが、冷たい風が吹いているところに、主人公の切ない心情が表現されているように思います。

 

 次の、『虹のように今日は逃げないで』という歌詞は、美しさとはかなさが両方あって、とても良い歌詞だと感じます。

 

 「虹」は、とても美しいものですが、つかむことはできません。

 

 そして、いつの間にか、消えていってしまうものです。

 

 この歌詞では、『君』のことを、「虹」に例えています。

 

 『君』を見て、主人公は、「虹のように美しいな」と感じています。

 

 しかし、残念ながら、二人が別れることは決まっています。

 

 そのため、『君』は、いずれ、虹のように、主人公の目の前から消えていってしまいます。

 

 主人公は、そのことを、よくわかっています。

 

 しかし、それがわかっていてもなお、『虹のように今日は逃げないで』と願っています。

 

 

 

 

 

まとめ

 スピッツ「君が思い出になる前に」の歌詞の考察を行ってきましたが、いかがでしたでしょうか。

 

 この曲の歌詞は、スピッツの中では、だいぶわかりやすい歌詞となっています。

 

 ただ、それでも、「草野さんならではの表現」が所々に散りばめられていて、歌詞のクオリティの高さに驚かされます。

 

 「美しさと切なさが同居した歌詞」と言えます。

 

 『君が思い出になる前に』という言葉は、言い換えると、「君ともう会えなくなる前に」ということです。

 

 ただ、「君ともう会えなくなる前に」という歌詞にしてしまうと、凡庸で、あまり印象に残りません。

 

 しかし、それを『君が思い出になる前に』という表現にすることで、すごく詩的な表現になって、強く印象に残ります。

 

 こういった、言葉選びのセンスの良さは、「さすが草野さんだな」と感心してしまいます。

 

 自分としては、この曲は、「同棲を解消した恋人の歌」のように聴こえました。

 

 歌詞を見ると、別々に住んでいたのではなく、一緒に生活を共にしていたような印象を受けました。

 

 この辺の感じ方は人それぞれだと思いますが、自分としては、この二人は、「浅い関係の恋人」というよりも、「同棲をして、結婚も考えていたくらい深い関係」だったのではないかと思います。

 

 そこまで考えていたのに、うまくいかなかったという切なさを、この歌詞からは感じます。

 

 このように、素晴らしい歌詞の曲ですので、この曲の歌詞をじっくり聴いたことがなかったという方は、歌詞に注意して、聴き直してみてください。

 

 そうすると、この歌詞の深さに、改めて気づくと思います。