スピッツ「空も飛べるはず」の歌詞の考察を行います。
「空も飛べるはず」は、1994年にリリースされたスピッツ8枚目のシングルです。
オリジナルアルバムでは、1994年にリリースされた「空の飛び方」に収録されています。
また、ベストアルバムにも収録されています。
この曲は、非常に有名な曲で、「スピッツの代表曲」と言ってもいいような曲です。
ほとんどの人が、一度はどこかで聴いたことがある曲ではないでしょうか。
非常にポップで、それでいて切なさもある、素晴らしいメロディの曲です。
ただ、歌詞は「ラブソングだ」ということはわかりますが、結構抽象的で、パッと聴いただけは、何が言いたいのか、少しわかりづらくなっています。
そこで今回は、この曲の歌詞を考察して、歌詞に隠された意味を探っていきます。
この曲の作詞・作曲者は、草野マサムネです。
歌詞の全文は、下記のサイトで見られます。
「空も飛べるはず」の歌詞の考察
1番のAメロの歌詞
幼い微熱を 下げられないまま
神様の影を恐れて
隠したナイフが 似合わない僕を
おどけた歌で なぐさめた
冒頭から、なかなか難解な歌詞が出てきます。
『幼い微熱を 下げられないまま』とは、一体、どういう意味なのでしょうか?
自分の解釈では、「幼い頃は、ずっと微熱があるような感じで頭がフラフラしていて、世界になじめなかった」といった感じの意味ではないかと思います。
『神様の影を恐れて』というのは、生きていく中で、ずっと、「誰かに怒られるのではないか」と怯えていたという感じでしょうか。
『隠したナイフ』という歌詞も、なかなか意味深です。
これは、実際にナイフを隠し持っていたということではなく、比喩でしょう。
この曲の主人公は、心の中に尖った部分を持っていて、それを『ナイフ』と例えたのだと思います。
ただ、主人公は、そこまで強い人間ではないため、心の中に尖った部分があることについて『似合わない』と感じているようです。
その後、『おどけた歌で なぐさめた』とあるので、そんな主人公を、誰かが歌を歌ってなぐさめてくれたようです。
それが誰なのか、歌詞には書かれていません。
ただ、それはきっと、主人公にとって大事な人なのではないかと思います。
1番のBメロの歌詞
色褪せながら ひび割れながら
輝くすべを求めて
『色褪せながら ひび割れながら』という歌詞を見ても、この主人公は、「社会になじめず、辛い日々を送っている」ことがわかります。
ただ、『輝くすべを求めて』という歌詞を見ると、そんな辛い毎日を送っていても、「輝きたい」という希望は捨てていないようです。
1番のサビの歌詞
君と出会った奇跡が この胸にあふれてる
きっと今は 自由に 空も飛べるはず
夢を濡らした涙が 海原へ流れたら
ずっとそばで笑っていてほしい
このサビの部分で初めて、『君』が出てきます。
『君と出会った奇跡が この胸にあふれてる』という歌詞を見ると、この主人公は、『君』と出会えたことを、心から喜んでいるようです。
そして、『きっと今は 自由に 空も飛べるはず』という歌詞を見ると、「空も飛べそうなくらいウキウキしている」ことがわかります。
次の、『夢を濡らした涙が 海原へ流れたら』という部分は、非常に詩的で、美しい表現ですね。
これは、どういった意味なのでしょうか?
『夢を濡らした涙』というのは、「夢が叶わなかった時に、涙を流す」ということでしょうか。
『海原へ流れたら』というのは、「夢が叶わなかった悲しみを、どこかに流したい」ということではないかと思います。
きっと、主人公は、『君』に対して、「自分の将来の夢が叶わなかったとしても、その時は、そばで笑ってなぐさめてほしい」と言っているのだと思います。
2番のAメロの歌詞
切り札にしてた 見えすいた嘘は
満月の夜にやぶいた
『切り札にしてた 見えすいた嘘』とは、どういう意味なのでしょうか?
きっと、『君』に対して、何かをごまかすためにつく嘘のことだと思います。
『見えすいた嘘』という歌詞を見ると、きっと主人公は、素直で嘘をつくことが下手なのでしょう。
『満月の夜にやぶいた』という歌詞は「もうそんな嘘はつかないと決めた」ということでしょう。
主人公は、『君』に対して、「嘘をつかず、まっすぐ向き合っていく」ということを決めたようです。
2番のBメロの歌詞
はかなく揺れる 髪のにおいで
深い眠りから覚めて
『髪のにおい』というのは、おそらく、「『君』の髪のにおい」でしょう。
『深い眠りから覚めて』という歌詞を見ると、この主人公は、『君』と一緒に寝ていて、『君』の髪のにおいで起きたのでしょう。
この歌詞を見ると、主人公は、「『君』と一夜を共にしたのかな」と推測することができます。
2番のサビの歌詞
君と出会った奇跡が この胸にあふれてる
きっと今は 自由に 空も飛べるはず
ゴミできらめく世界が 僕たちを拒んでも
ずっとそばで笑っていてほしい
『君と出会った奇跡が この胸にあふれてる きっと今は 自由に 空も飛べるはず』という歌詞は、1番のサビと同じです。
この部分は、素直に解釈すれば、「君と出会えて、空も飛べそうなくらいウキウキしている」という意味になるでしょう。
ただ、本当に、それだけの意味なのでしょうか?
『君』と出会っただけで、『空も飛べるはず』という気分にまでなるというのは、なんだか気分が盛り上がりすぎな気もします。
「出会っただけで、そこまで気分が盛り上がるかな?」と少し疑問に思ったりします。
自分としては、ここの部分の歌詞には、実は、「裏の意味」も含まれているように感じます。
スピッツの歌詞は、昔から、「性」が裏テーマになっていると言われています。
一見、性的な内容ではないように見える歌詞でも、よく見ると、「実は性的な内容が含まれていた」ということがよくあります。
ここの部分の歌詞にも、よく見ると、性的な意味が含まれているように感じます。
サビ前の『はかなく揺れる 髪のにおいで 深い眠りから覚めて』という部分の歌詞を見ても、だいぶ性的な雰囲気を醸し出していることがわかります。
それを考えると、『空も飛べるはず』という歌詞には、「好きな人と一夜を共にして、一つになれて、空も飛べそうな気分だ」という意味も込められている気がします。
そのため、この歌詞には、「君と出会えた喜び」だけでなく、「君と一つになれた喜び」も含まれているのではないでしょうか。
もし、主人公が『君』とそうなれていたとしたら、『空も飛べるはず』という気分になるのも納得できます。
「好きな人と一つになれること」は、多くの人にとって、無上の喜びだったりしますから。
そして、その次に、『ゴミできらめく世界』という歌詞が来ますが、これは本当に素晴らしい表現だと思います。
『ゴミできらめく世界』とは、どういう意味なのでしょうか?
晴れた日に、「細かいゴミ(ほこり)が宙に舞って、光っているところ」を見たことがある人は多いともいます。
草野さんは、きっと、そういう場面を見て、この歌詞を思いついたのではないかと思います。
ほこりが宙に舞って光っていると、それはなかなかきれいだったりします。
しかし、いくらきれいでも、それは、結局、「ゴミ」です。
細かいゴミが沢山舞っている場所に立って、ゴミを沢山吸い込むと、健康を害します。
草野さんは、おそらく「現実社会」のことを『ゴミできらめく世界』と例えたのだと思います。
現実社会というのは、パッと見は、ゴミできらめく世界のように、「きれい」だったりします。
表向きは「きれいごと」を言う人が多いですし、社会は、汚い部分を表には出さないようにしています。
ただ、自分が実際に現実社会に足を踏み入れると、「人間の裏の部分の汚さ」に気づいたり、「社会の汚い仕組み」に気づいたりして、社会に絶望する人も沢山います。
そういう意味で、『ゴミできらめく世界』という言葉は、現実社会の表と裏を、一言で見事に言い表した言葉だなと思います。
こういった表現は、「詩人・草野マサムネの真骨頂」という感じがしますね。
草野さんのこの表現力には脱帽です。
そして、その後の、『僕たちを拒んでも』というのは、「社会が僕と『君』を拒んでも」という意味でしょう。
主人公は、「この先、二人は、社会にうまく適応できないかもしれない」と思っているようです。
ただ、もしそうなったとしても、主人公は、「『君』がそばで笑っていてほしい」と願っています。
「たとえ社会が自分の味方をしてくれなくても、『君』が見方でいれくれれば、僕は頑張れる」ということかもしれません。
まとめ
スピッツ「空も飛べるはず」の歌詞の考察を行ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
歌詞をじっくり見ていくと、そこかしこに、「深い意味」が隠されていることがわかったと思います。
この曲に使われている歌詞は、非常に簡単な言葉ばかりです。
しかし、それにも関わらず、これだけ深い意味を持たせられるというのは凄いですね。
「さすが草野さん」と唸らせます。
ただ、様々な意味は隠されているものの、この歌詞は、主に、「好きな人と出会えて、その人と一緒に過ごす喜び」を歌っていると思います。
そのため、所々ネガティブな表現はありますが、全体としては、ポジティブな曲になっています。
もし、「今まで、この曲の歌詞をじっくり聴いたことがなかった」という方がいたら、このブログの内容をふまえて、改めて聴き直してみてください。
そうすると、新たな発見があって、なかなか面白いと思います。