2023年の10月、新宿区が主催する「SHIN-ONSAI(シンオンサイ)」という音楽フェスに行ってきました。
2日間参加しましたが、今回は、10月8日(日)の2日目の模様をレポートします。
ちなみに、1日目の模様もブログ記事にしていますので、気になった方は、そちらも読んでみてください。
ライブを観たアーティスト
ここからは、私が観たアーティストのライブについて語っていきます。
□□□(クチロロ)
この日は、クチロロのライブから見ました。
今回のライブでは、クチロロの正式メンバーである、村田シゲさんと、いとうせいこうさんは不参加でした。
しかし、サポートの女性コーラスが沢山参加しており、ステージは大人数で、華やかな雰囲気です。
衣装は、トップスをみんな白で揃えていて、統一感があって、良い感じです。
本編開始前に、リハで、「Everyday」をやっていましたが、とても良くて、リハの段階で、会場は結構盛り上がっていました。
本編の最初の曲は、「スカイツリー」でした。
この曲は、歌詞に、原発に対する社会的メッセージが含まれている曲です。
そのため、歌詞をじっくり聴いていると、少し複雑な気持ちにもなります。
ただ、基本的にメロディがポップなので、シリアスにはなりすぎません。
そして、曲の途中に演劇のような「会話」のパートがあるのも特徴です。
今回のライブでは、会話のパートも、生でテンポよく行っていたことに驚きました。
15分くらいある長い曲ですが、曲の構成が巧みなので、「長いな」と感じずに、あっという間に時間が過ぎました。
その後、今回のシンオンサイのため作った新曲もやっていましたが、ポップで明るい曲で、とても良い曲だと感じました。
「ふたりは恋人」は、かなり久々に聴きましたが、かわいらしくて、ほっこりする曲だと思いました。
去年のシンオンサイのために作った新曲を挟み、最後は、「いつかどこかで」をやっていました。
「いつかどこかで」は、クチロロらしいポップさや実験精神が詰まった曲で、改めて良い曲だと感じました。
また、「いつかどこかで」の途中でメンバー紹介をしていましたが、女性コーラスの人のことを「契約社員」と呼んでいたのが面白かったです。
そして、ギターは、サポートで、星野概念さんという方が担当していました。
星野さんは、三浦さんがMCをしていて話が長くなりそうな時に、「そうやって喋っていると時間が押すよ」と突っ込みを入れていたのが印象的でした。
そして、後で、ネットで星野さんのことを調べてみると、精神科医をやりつつ、ミュージシャンもやっていると知って驚きました。
また、クチロロは、ライブだけでなく、物販のやり方も面白かったです。
今回の物販では、未発表曲のCD-Rを売っていました。
しかし、だだ出来合いのものをただ売るだけではありませんでした。
三浦さんは、MCで、「もし、『歌もの多め』とか、『ラップ曲多め』といったリクエストがあれば、そのリクエストに応えて、その場でPCからCD-Rに焼きます」と言っていました。
これを聴いて、「そういう売り方もあるのか!」と目からうろこでした。
クチロロは、音楽だけでなく、物販のやり方も面白いんだなと思いました。
セットリスト
リハ:Everyday
1.スカイツリー
2.シンオンサイ2023のために作った新曲
3.ふたりは恋人
4.シンオンサイ2022のために作った新曲
5.いつかどこかで
ROTH BART BARON(ロット・バルト・バロン)
「ロット・バルト・バロン」については、音源は聴いていましたが、ライブは観たことがありませんでした。
そのため、「どんなライブをやるんだろう?」と興味がありました。
ライブが始まると、前半は、割と淡々と演奏している感じでした。
ライブを聴くと、ボーカルのファルセットの美しさと、バンドの演奏の力強さが印象に残りました。
「和製シガーロス」といった雰囲気ですが、シガーロスよりも歌ものといった感じで、歌やメロディを中心に曲を作っている感じがしました。
自分は、「極彩」という曲が好きなのですが、今回のライブでも演奏してくれて、嬉しかったです。
この曲をライブで聴いていると、『君の物語を 絶やすな』、『誰かが作った幸せに 逃げるな』という歌詞が非常に胸に刺さりました。
この曲を聴いていると、「自分の道を行け」と背中を押してくれるような感じがしました。
ライブの後半には、客に手拍子を促したり、客にコーラスをするよう煽ったりもしていました。
音源の印象だと、クールに淡々とライブをやりそうな印象だったので、こういう風に客を煽ったりするのは、意外な感じがしました。
ただ、客を煽ることで、客のテンションもどんどん上がっていき、最後は、非常に盛り上がって終了となりました。
「一見クルールに見えるけど、実は、客を盛り上げるのがうまいな」と感じました。
あらかじめ決められた恋人たちへ
かなり長いバンド名のバンドなので、「あら恋」と略されることが多いバンドです。
「あら恋」は、ライブの凄まじさに定評があります。
自分は、そのライブの凄さにやられて、昔は、結構「あら恋」のライブを観ていました。
ただ、最近は、全然ライブを観ていませんでした。
そのため、「最近のライブは、どんな感じなんだろうか?」と気になっていました。
今回のライブでは、バックに映像を映しながら行っていました。
その映像は、とてもクールで、バンドの雰囲気とも合っていました。
そして、演奏も、非常に素晴らしかったです。
「静かな部分」と「爆発する部分」があり、メリハリが効いていました。
高い演奏技術があるバンドなので、「静かな部分」では、演奏をじっくりと楽しむことができました。
ホールで、細かい音も聴こえやすかったので、ライブハウスで聴く以上に、演奏の細かい部分まで楽しめました。
そして、「爆発する部分」では、「これぞ、あら恋」と言えるような、力強い演奏を聴かせてくれました。
こういった、「エネルギーの塊をぶつけてくるような演奏」は、今も昔も変わらないなと思いました。
50分があっという間で、大満足のライブでした。
ライブを観終わって、改めて、「あら恋は、ホールに向いているバンドだな」と思いました。
映像を使ったりするので、ホールだと、大画面で映像を楽しめます。
また、静かなパートもあるので、ホールだと、細部の演奏もじっくり楽しめます。
そして、「爆発する部分」では、ホールならではの迫力を感じられます。
「あら恋」は、基本的には、ライブハウスで演奏する機会が多いバンドだと思います。
ただ、今回、ホールで演奏すると映えるバンドだと実感したので、また機会があれば、ホールでの演奏を観たくなりました。
前野健太
前野健太さんの音楽は、ちらっと聴いたことはありましたが、しっかり聴いたことはありませんでした。
ただ、せっかくの機会なので、ライブを観てみることにしました。
会場は、小ホールでした。
今回は、本人のみの、ギターの弾き語りライブでした。
MCでは、「ずっとシンオンサイに出たかった」と言っていました。
そして、「新宿をテーマにした曲が結構ある」と言って、「SHINJUKU AVENUE」という曲を演奏したりしていました。
前野健太さんのライブを聴いていると、なんだか、長渕剛の「西新宿の親父の唄」を思い出してしまいました。
前野さんの歌詞は、細かく日常の風景や情景を描写していますが、そこが、「西新宿の親父の唄」と重なります。
彼の音楽は、フォーク色が強かった頃の長渕剛と似ている感じがします。
前野さんのライブを聴いていると、「新宿の路地裏の風景」が目の前に浮かんでくるような感じがしました。
独特の雰囲気がある良いライブでしたが、ザゼンボーイズを観るため、残念ながら、ライブの途中で、小ホールを出ました。
ZAZEN BOYS
ザゼンボーイズのライブは、昔は結構観ていましたが、最近は、全く観ていませんでした。
そのため、「今のザゼンボーイズのライブはどんな感じなんだろう?」と気になっていました。
女性ベーシストのMIYAさんが加入してからライブを観たことがなかったので、どんなベースを弾いているのかも、興味がありました。
開演時間の少し前に大ホールに着くと、ザゼンボーイズのメンバーがリハをしていました。
リハでは、「Honnoji」をやっていて、リハの時点で凄まじい演奏をしていたので、「これは凄いライブになりそうだぞ」という予感が漂っていました。
サウンドチェックが終わると、向井秀徳さんは、「それではでは、また明日」というギャグを言って、ステージ袖にはけていきました。
開演時間になると、再び、ザゼンボーイズのメンバーがステージに出てきました。
ただ、向井さんは、照明が暗いのが気に食わなかったようで、照明さんに「もっと明るくして」と言っていました。
「『あら恋』がスペースワールドだったので、照明も、それに引きずられておる」と言っていて、笑いました。
そして、「客の方の照明も明るくして。照明を明るくして、カジュアルにいこう」といって、客の照明も明るくした状態で、ライブが始まりました。
この日の向井さんは、「○○年発売のアルバムの△△から、□□という曲を演奏します」といったように、ラジオDJ風に曲紹介をしていました。
これが向井さんのマイブームなのかもしれません。
MCは、相変わらず、とぼけた感じでしたが、演奏が始まると、空気は一変します。
「鋼鉄の演奏」と言いたくなるような、タイトで力強くて、なおかつ正確な演奏が繰り広げられました。
今回のザゼンボーイズのライブでは、照明は、ただ照らしているだけで、特別な演出はありませんでした。
しかし、特別な演出がないにもかかわらず、演奏を聴いているだけで、「これは凄い!」と大興奮してしましました。
ザゼンボーイズの前に大ホールで演奏していた「あら恋」は、「映像や照明」も含めて、トータルで世界観を作っていくバンドです。
そういう意味では、「あら恋とザゼンボーイズは、対照的だな」と思いました。
演奏だけでなく、「トータルの世界観」で勝負している「あら恋」のライブは、完成度が高く、素晴らしいものでした。
しかし、「あら恋」のライブを観た後だと、余計に、「演奏だけで、その場の空気を支配しているザゼンボーイズは凄まじいな」と感じてしまいました。
もちろん、「あら恋」の演奏も素晴らしいので、「あら恋の演奏よりも、ザゼンボーイズの演奏の方が優れている」と言う気は、全くありません。
ただ、演奏だけで客を圧倒している姿を見ると、改めて、「ザゼンボーイズは、とんでもない、化け物みたいなバンドだな」と思いました。
そして、ザゼンボーイズの演奏を聴いていると、自然と、体が動いてしまいました。
ザゼンボーイズを観る前までは、「椅子に座って、ゆったりとライブを観られるのは素晴らしい」と思っていました。
しかし、ザゼンボーイズのライブを聴きながら体が動いてしまうと、座らずに、「立って踊りたいな」という気持ちになってきました。
ザゼンボーイズの時だけは、「椅子に座って観るのではなく、スタンディングで観たいな」と思ってしまいました。
今回のライブでは、「ヒミツガールズ・トップシークレット」「リフマン」「ポテトサラダ」といった人気曲を演奏していました。
それに加えて、「チャイコフスキーでよろしく」という新曲も披露していました。
この曲は、ザゼンボーイズの割にはストレートな曲で、どこかナンバーガールっぽさもある曲だと思いました。
本編が終わると、メンバーは、舞台袖にはけます。
そして、アンコールで再び出てきて、「はあとぶれいく」を演奏して、ライブが終了しました。
とにかく凄まじい演奏で、「圧巻」と言えるライブでした。
ベーシストのMIYAさんが加入してから初めてライブを観ましたが、凄まじいベースを弾いていました。
ただ、ザゼンボーイズは、メンバー1人1人の演奏というより、「4人で一斉に音を出した時のインパクト」が凄まじいバンドだなと思いました。
この迫力は、まさに、バンドならではの醍醐味です。
改めて、ザゼンボーイズの凄さを実感しました。
まとめ
この日は、5組のライブを観ましたが、どれも素晴らしいライブでした。
そして、この5組の中でも、個人的には、「クチロロ」「あら恋」「ザゼンボーイズ」が特に印象に残りました。
この3組は、音楽性は、全く違います。
しかし、音楽性は全く違っても、3組とも、「心から素晴らしい」と思えるようなライブでした。
こんなに素晴らしいアーティスト達を、ホールで一気に観られるのは、非常に贅沢で、素晴らしい体験だと思いました。
こういった素晴らしいアーティストをブッキングしてくれたブッキング担当の方には、感謝します。
また、このイベントのために、動いてくれたスタッフの方々にも感謝したいです。
こんなに素晴らしいイベントを開いて頂いて、ありがとうございました。
出演アーティストも素晴らしかったですし、会場の居心地も良く、とても快適に過ごせました。
ちなみに、会場の張り紙で知りましたが、このイベントの会場になった新宿文化センターは、今後、改装のため、一旦、閉まるようです。
そのため、来年のシンオンサイは、新宿文化センターで行うことは難しいようです。
この会場で行えないことは残念ですが、素晴らしいイベントなので、会場が変わったとしても、また来年も開催してほしいです。
そして、新宿文化センターの改装が終わった際は、またこの場所に戻って、開催してほしいところです。
本当に素晴らしい音楽フェスだと思うので、このイベントが、できるだけ長く続くことを願っています。
自治体が主催で、ここまで素晴らしい音楽フェスを作りあげられているのは、正直、驚いています。
「素晴らしい音楽を多くの人に伝える」という意味では、非常に意義のあるイベントだと思います。