自分が気に入っている曲の紹介をします。
今回紹介するのは、「ゲスの極み乙女。」というバンドの「私以外私じゃないの」という曲です。
有名なバンドなので、「知っている」という方も多いと思いますが、一応、バンドについて、紹介します。
ゲスの極み乙女。とは
ゲスの極み乙女。は、4人組のロックバンドです。結成は2012年です。
メンバーは、ギター・ボーカルの川谷絵音、ベースの休日課長、キーボードのちゃんMARI、ドラムのほないこかです。
作詞作曲は、ギター・ボーカルの川谷絵音が担当しています。
ギター・ボーカルとベースが男性、キーボードとドラムが女性です。男性2人、女性2人という編成のバンドは、意外と珍しいかもしれません。
音楽性はロックを基本に、プログレ、ヒップホップ、ジャズの要素も混ざります。
色々な音楽の要素が混ざっているものの、ポップな曲を演奏するバンドです。
バンド名を見ると、「コミックバンドかな?」とも思いますが、メンバーの演奏スキルは高く、アレンジも凝っています。
私以外私じゃないの
ゲスの極み乙女。は、様々な楽曲を発表していますが、その中でも、自分が特に好きなのは「私以外私じゃないの」です。「両成敗」というアルバムに収録されている曲です。
YouTubeにも曲がアップされているので、まずはこちらを聴いてみてください。
この曲は、自分が一番最初に聴いた、ゲスの極み乙女。の曲でもあります。
これを聴く前は、「売れ線のバンドで、バンド名も変だし、たいしたことないだろう」と高をくくっていました。
しかし、試しに聴いてみると、「これは、すごい曲だ!」と衝撃を受けました。
そして、「ただの売れ線のバンドではなくて、確かな実力のあるバンドだ」と思いました。
まず、各楽器のパートが、複雑な演奏をしているにも関わらず、耳障りがポップなことに驚きました。
また、メロディーは非常にポップで覚えやすいと感じました。ポップな上に、どこか切なさがあるところも良いと思いました。
そして、川谷さんのボーカルも、繊細で声質がいいと感じました。
パッと聴いて、「これは、確かに売れる!」と思いました。
メンバーの音楽的素養や演奏スキルは高そうですが、それをここまでポップに落とし込めるバンドはそうはいません。「複雑な演奏を、複雑に感じさせず、ポップに聴かせる」スキルは、相当だなと思いました。
そして、何より、歌詞の深さにも驚かされました。
「私以外私じゃないの」の歌詞の凄さについて
売れ線の曲というのは、一般的に、わかりやすい恋愛の歌詞をつけがちです。
しかし、この「私以外私じゃないの」の歌詞は、そういった単純な恋愛の歌詞とは全く異なり、ある種、哲学的な内容となっています。
この曲の歌詞は、パッと聴いた感じは、「失恋の歌詞」のようにも聴こえます。
確かに、この歌詞を「失恋の歌詞」と解釈することも可能でしょう。
しかし、歌詞カードをじっくり見てみると、「恋愛以外にも当てはまる」ことがわかります。
この主人公は、はっきりとはわかりませんが、何かうまくいかないことがあって落ち込んでいます。
しかし、「私は私」と割り切って、うまくいかない自分を受け入れて、前に進もうとしています。そういった心情を描いた歌詞です。
では、具体的に、サビの部分の歌詞を見てみましょう。
私以外私じゃないの
当たり前だけどね
だから報われない気持ちも整理して
生きていたいの
普通でしょ?
自分は、このサビの歌詞を最初に聴いた時、ハッとさせられました。
この曲を初めて聴いた時、自分自身も、「人生、なんだうまくいかないな」と思っていたので、余計にハッとさせられたのかもしれません。
人間というのは、何かうまくいかないことがあったりすると、「もっと頭が良く生まれたかった」とか、「もっとルックスが良くうまれたかった」「もっと明るい性格に生まれたかった」などと、つい思ってしまったりします。
そして、「頭が良く、見た目が良く、明るい人」などを見ると、「うらやましい」と感じ、「自分もあんな風に生まれたかった」と思ったりします。
しかし、そう思ってしまうと、どんどん自己嫌悪に陥ってしまいます。なぜなら、「あんな風に生まれたかった」と思っても、そうなることは不可能なのですから。
そうなると、自分を責めるばかりで、何も前に進まず、物事がうまくいかなくなる確率が高くなってしまいます。
ですから、誰かのことをうらやましく思っても、物事を少しでも好転させるためには、自分自身を受け入れる必要があります。
「ダメな私でも、私なんだ」と、ダメな自分をきちんと受け入れるようにした方が、前に進む意欲が出てきやすくなります。
こういった内容のことは、心理学の本を読むと、載っていたりします。
うつ病になる人というのは、大抵の場合「ダメな自分」を受け入れられません。うつ病になる人の多くは「理想が高い」傾向にあります。
「理想の私」と「現在の私」を比べて、「今の私は、理想とは程遠い。だから、今の私は全然ダメだ」と、必要以上に自分を責めてしまいます。
そして、今の自分を受け入れられず、自分を責めてばかりいると、気分がどんどん落ち込み、うつ状態になってしまいます。
しかし、ある時、「ダメな私も、私なんだ」と、ダメな自分を受け入れるように、考え方を変えられたとします。
そうなると、ダメな自分も「これはこれで仕方ない」と割り切るようになるので、自分をあまり責めなくなります。すると、「できる範囲で、なんとかやってみようか」と、前に進む意欲が出てきたりします。
このように、「ダメな自分を受け入れる」ことは、うつ状態を脱するためには、とても重要なことです。
うつ病の人は、カウンセリングを受けたり、心理学の本を読むことで、「ダメな自分を受け入れることの重要さ」に気づきます。そして、それに気づくのは、簡単なことではありません。何度もカウンセリングを受けたり、何冊も本を読んだりして、やっと気づいたりするものです。
しかし、この「私以外私じゃないの」という曲の歌詞では、心理学の本に長々と書かれているような、哲学的で本質的なことが、非常に簡単な言葉で、簡潔に述べられています。そして、ポップなメロディに乗っているので、歌詞が素直に心に入ってきます。
そのため、この曲を少し聴くだけで、心理学の本に長々と書いてあるような本質的なことに、パッと気づけたりします。
そういった本質的なことに気づいた瞬間、「ハッとさせられる」のだと思います。
「私以外私じゃない」という、哲学的で本質的な言葉を、ポップソングの歌詞としてうまく乗せるということは、非常に難しいことだと思います。
そういったことができる、川谷絵音という男の才能は、すさまじいなと感じました。
自分自身、「俺ってダメだな」と思うことは、沢山あります。
しかし、この曲を聴くと、「そんなダメな自分も、ちゃんと受け入れて生きていかないとな」ということを、改めて思ったりします。
そういうことに気づけるポップソングは、なかなかないと思うので、そういう意味でも、この曲は、本当に凄い曲だなと感じています。