2023年2月15日、ネットを見ていたら、目を疑うようなニュースが飛び込んできました。
「Hi-STANDARD(ハイスタンダード)のドラムの恒岡章さんが51歳で死去」というニュースです。
2023年2月14日に亡くなったとのことで、死因については特に書かれていませんでした。
個人的に、近年の恒岡さんの音楽活動については、正直、あまりチェックしていませんでした。
ただ、2022年のフジロックで、ユアソングイズグッドのサポートドラマーとして叩いたのを見ました。
YouTubeの配信で見たので、生のグルーヴは体感できませんでしたが、配信で見たため、逆に恒岡さんのプレイをじっくり見ることができました。
そのライブを見て、「恒岡さんは、速い曲だけでなく、こんなゆったりした曲もうまく叩けるんだ。器用で良いドラマーだな」と思っていました。
そして、その時は、まさか翌年亡くなるとは、夢にも思いませんでした。
自分が中学生~高校生の頃、ハイスタは、大ヒットしていました。
そのため、周囲の友達でハイスタを聴いている人が多く、自分も周囲の影響で、ハイスタの音楽を聴くようになりました。
そして、実際に聴くと、「日本にもこんなかっこいいバンドがいるのか!」と衝撃を受けました。
正直、自分は「ハイスタンダードの大ファン」という程ではありません。
ただ、大ファンではなくとも、昔から好きなバンドの一つです。
好きなバンドのドラマーが亡くなってしまったことはとても悲しいですが、今回は、恒岡さんへの追悼の意味も込めて、バンド「Hi-STANDARD」の魅力について語っていきます。
ハイスタンダードとは
ハイスタンダードの魅力を語る前に、ハイスタンダードというバンドについて説明していきます。
Hi-STANDARD(ハイスタンダード)は、1991年に結成されたパンクバンドです。
メンバーは、難波章浩(ボーカル・ベース)、横山健(ギター・コーラス)、恒岡章(ドラム・コーラス)の3人です。
「メロディック・パンク」「メロディック・ハードコア」と呼ばれる、速く激しく、それでいてメロディアスな音楽を演奏するバンドです。
「ハイスタンダード」だと長いので、「ハイスタ」と略されることが多いです。
また、音楽ジャンルについても、「メロディック・ハードコア」を略した「メロコア」や「メロコア系」と呼ばれたりもします。
「メロコア」と呼ばれるジャンルの音楽を日本に根付かせたバンドと言えます。
2000年に、人気絶頂の中、活動休止をします。
その後、再結成を望む声が多かったものの、バンドは活動休止状態が続いていました。
しかし、2011年に、東日本大震災のチャリティーの意味も込めて、再結成を果たしました。
ちなみに、ハイスタで一番有名な曲は、おそらく「STAY GOLD」でしょう。
ファンの中でも人気がある曲で、「この曲が一番の代表曲」と言う人も多いです。
YouTubeにオフィシャルのミュージックビデオがアップされているので、「まだハイスタを聴いたことがない」という方は、まずはこの曲から聴いてみてください。
この曲は、1999年にリリースされたアルバム「MAKING THE ROAD」に収録されています。
ハイスタンダードの魅力
ここからは、私が思う、ハイスタンダードの魅力について語っていきます。
圧倒的なスピード感
ハイスタの楽曲を初めて聴くと、おそらく、「テンポがやたら速いな」と感じるでしょう。
このバンドが好きな人は、その「テンポの速さ」に魅力を感じている人が多いと思います。
一部例外はあるものの、ハイスタの楽曲は、「テンポの速い曲」が圧倒的に多いです。
テンポが速いと、自然と気分も高揚します。
そういった「気分の高揚感」を得られるところが、ハイスタが人気になった一つの要因だと思います。
特に、10代~20代の若いリスナーにとっては、この「テンポの速さ」は魅力的に映るでしょう。
アメリカ西海岸のパンクバンドのような音と演奏
自分が中学生の時、ハイスタを初めて聴いて、「これは、本当に日本のバンドか?」と衝撃を受けました。
音の質感と演奏が、アメリカ西海岸のパンクバンドのようだったからです。
まず、「音の質感」が、当時の他の日本のパンクバンドと全然違うと感じました。
ハイスタの音は、「カラカラに乾いていて、湿度が全然ない」といった感じの音です。
なんだか、日本のバンドというより、アメリカ西海岸のパンクバンドにありそうな音でした。
そして、「演奏」は、非常に速くてパワフルで熱く、聴いていて圧倒されました。
ただ、楽器に詳しい人で、「ハイスタは、演奏があまり上手くない」と言う人もいます。
確かに、細かく見ていったら、荒い部分もあるのかもしれません。
しかし、ハイスタの演奏は、「上手いか下手か」といったことはどうでもよくなるくらい、「熱」が伝わってきて、心が熱くなりました。
とにかくやたらと熱量を感じる演奏は、まるで海外のパンクバンドのようで、「日本人離れしている」と感じました。
1990年代中頃の日本では、こういった音と演奏のパンクバンドは、他にほとんどいなかったように思います。
その当時、海外では「グリーンデイ」というメロディック・パンクバンドがヒットしていました。
ちなみに、グリーンデイも、西海岸のカリフォルニア出身のバンドです。
自分は、グリーンデイの曲を聴いた後にハイスタを聴いたりもしていましたが、聴き比べても、あまり大きな違いは感じませんでした。
「ハイスタは、日本のバンドというより、西海岸のパンクバンドみたいだな」と思いました。
そして、海外のパンクバンドにも引けをとらない日本のバンドがいることに対して、なんだか誇らしい気分にもなりました。
当時は、「日本のバンドよりも海外のバンドの方が格上」という風潮がありましたが、ハイスタを聴くと、「ハイスタは海外のバンドに負けてないじゃん」と思えました。
グリーンデイの来日時にハイスタが前座を務めたこともあったので、グリーンデイのメンバーも、ハイスタの音楽は認めていたのだと思います。
そして実際、ハイスタは、アメリカでもCDをリリースしており、アメリカでもメロディック・パンクが好きな層からは評価されていました。
このように、「洋楽のパンクバンドと聴き比べても、引けをとらない音と演奏」は、ハイスタの大きな魅力の一つです。
「アメリカ西海岸スタイル」を日本に定着させた
ハイスタというバンドは、音楽だけでなく、「ストリートカルチャー」の面でも、日本に多大な影響を与えたバンドでした。
1990年代の中頃、アメリカ西海岸では、「短パン・Tシャツ・スニーカー」というファッションでスケボーをして、「音楽はメロディック・パンクを聴く」というキッズが沢山いました。
そして、ハイスタのメンバーは、それを見て、「そういうライフスタイル、いいな」と思ったのでしょう。
そのためか、ハイスタのメンバーは、そういった「西海岸のキッズのスタイル」を取り入れていました。
ハイスタ以前の日本のパンクは、「鋲つきの革ジャンに、細身のジーンズをはいて、足下はブーツ」といういかついスタイルが主流でした。
しかし、そんな中、日本のパンクシーンの中にパッと飛び出してきたのがハイスタです。
ハイスタは、今までの日本のパンクファッションにはない「短パン・Tシャツ・スニーカー」という非常にラフな格好をしていました。
いわゆる西海岸によくいるキッズの格好ではありますが、当時のパンクシーンでは、それが逆にとても新鮮に映りました。
そして、「バンドをやりつつスケボーもやる」というスタイルも新しく、そのライフスタイルを見て「かっこいい!」と感じたキッズが多かったと思います。
その証拠に、ハイスタが流行った頃、「短パン・Tシャツ・スニーカー」という格好で、スケボーもするという日本のキッズが沢山いました。
スニーカーは、スケボーをするので「バンズ」や、その他のスケボー用のシューズをはいていました。
そのため、当時、「短パン・Tシャツ」にスケボーシューズをはいている人を見ると、「あの人、きっとハイスタが好きなんだろうな」と予想できました。
そして、実際にそういう人と音楽の話をすると、ほとんどの人が、「ハイスタが好き」と言っていました。
きっと、ハイスタがとてもかっこいいバンドだったため、「ハイスタが取り入れている西海岸スタイルもかっこいい」と思って、キッズがみんなハイスタのスタイルを真似したのでしょう。
また、「短パン・Tシャツ・スニーカー」というスタイルは、安い値段でそろえられるので、それもキッズの中で流行った理由の一つかもしれません。
このように、90年代の日本のストリートでは、ハイスタの影響により、「西海岸スタイル」を取り入れるキッズが爆発的に増えました。
それにより、「西海岸スタイル」が、日本のストリートカルチャーの定番スタイルとして確立されました。
そして、「西海岸スタイル」のファッションは、2023年のストリートの中でも、しっかりと定番のスタイルとして根付いています。
こういったことを考えると、ハイスタは、音楽だけでなく、ファッションやライフスタイルの面でも日本のストリートに多大な影響を与えたと言えます。
「日本人なのに英語で歌う」という衝撃
ハイスタは、基本的に、歌詞は全て英語で歌っています。
これも、中学時代に初めてハイスタを聴いた時は、非常に衝撃的でした。
「歌詞の一部分だけ英語」というバンドは結構いましたが、「全て英語で歌う日本のバンド」は、当時、他にほとんどいなかったからです。
全て英語詞にした理由は、色々考えられます。
ただ、自分としては、「ハイスタのサウンドには、日本語よりも英語の方が合うから」という理由が一番大きいのではないかと思います。
ハイスタは、西海岸のパンクバンドのような、乾いた陽気な音を出すバンドです。
そういうバンドの音に日本語詞を乗せると、「重くなりすぎる」のではないでしょうか。
日本語は、英語に比べて母音が多いため、どうしても音に重さが出てしまいます。
ハイスタは、西海岸のパンクバンドのような軽やかな音なのに、そこに日本語を乗せると、変な重さが出て、チグハグになってしまうのではないでしょうか。
それで、「だったら、英語詞にしよう」ということで、英語詞になったではないかと思います。
そして実際に、ハイスタの曲を聴くと、「英語が、違和感なくメロディに乗っていてとてもかっこいい」と感じました。
やはり、ハイスタの音楽には、英語詞が非常に合っていると思います。
ただ、英語を喋れる方からは、「ハイスタは、発音がイマイチ」という声もちらほら聴きます。
確かに、改めてじっくり聴くと、あまり滑らかな発音とは言えません。
ただ、パッと聴いた感じの音が非常にかっこいいので、個人的には、多少の発音の悪さはあまり気になりません。
歌詞に前向きなメッセージが込められている
ハイスタの歌詞は基本的に全て英語なので、英語を話せない人にとっては、聴いていてもパッと意味がわからなかったりします。
しかし、歌詞を和訳してみると、なかなかグッとくるメッセージが込められていたりします。
また、過去に、ハイスタのメンバーが「日本語でラブソングやまっすぐなメッセージを歌うと恥ずかしいから、英語詞にした」と語っていたインタビューを見たことがあるので、そういったことも、英語詞にした理由の一つだと思います。
パンクバンドというと、「反抗的で攻撃的な歌詞」のものが多いと思います。
しかし、ハイスタの歌詞は、そういったものとはだいぶ違います。
「仲間との友情」「夢をあきらめない心」「失敗しても立ち上がる気持ち」「好きな人に対する愛情」といった、ピュアで前向きなメッセージが込められています。
ハイスタの音楽については、最初は、「英語がわからないし、歌詞の意味はどうでもいい」と思って聴いているキッズが多かったと思います。
しかし、何度も聴いているうちに、「いったいどんなことを歌っているんだろう?」と歌詞の意味を調べて、グッときたキッズも沢山いたでしょう。
ハイスタの歌詞に込められたピュアで前向きなメッセージは、いつの時代も廃れないと思います。
ロッキングオンのサイトに、ハイスタの歌詞の素晴らしさを紹介しているページがあるので、興味のある方は、こちらのページも見てみてください。
カバー曲のセンスが抜群に良い
ハイスタは、基本的にはオリジナル曲を演奏するバンドです。
ただ、時々、カバー曲も演奏します。
そして、そのカバー曲が、どれも非常に素晴らしいのです。
カバー曲であっても、オリジナル曲に引けをとらない素晴らしさがあります。
ハイスタは、基本的に、「パンクの曲をパンクっぽくカバーすること」はあまりしません。
大体、ゆったりした曲をパンクバージョンにしてカバーしています。
ハイスタは、「え、この曲をパンクバージョンにするの?」と誰もが驚く曲をカバーします。
自分が初めて聴いたハイスタのカバー曲は、ベイ・シティ・ローラーズ「SATURDAY NIGHT」のカバーでした。
原曲は、かなりテンポがゆったりした感じのロックです。
しかし、ハイスタは、これを、超高速のパンクナンバーにしてカバーしました。
ちなみに自分がハイスタの「SATURDAY NIGHT」を聴いたのは中学1年生の頃でしたが、原曲のベイ・シティ・ローラーズの方は聴いたことがありませんでした。
「SATURDAY NIGHT」に関しては、ハイスタのカバーを先に聴きました。
後で、「これはカバー曲である」ということを知って、原曲も聴いてみました。
そうしたら、「うわ、原曲は全然違う!」と衝撃を受けた記憶があります。
普通とは逆のパターンですが、「ハイスタから入って、原曲を聴く」という体験も、なかなか面白かったです。
そして、ハイスタのカバー曲の中でも、自分が一番衝撃を受けたのは、「はじめてのチュウ」のカバーです。
「はじめてのチュウ」は、アニメ「キテレツ大百科」のエンディングテーマでしたが、非常にゆったりしたかわいい曲で、パンクとは真逆のイメージの曲です。
「ハイスタが、はじめてのチュウを英語でカバーしたらしい」と聞いた時、「日本のバンドが、日本語の曲を英語の歌詞に変えてカバーする」という発想は、他のバンドではありえないと思いました。
タイトルも、「はじめてのチュウ」ではなく、「MY FIRST KISS」になっています。
しかも、普通のカバーではなくパンクバージョンでカバーしているのです。
ただ、「曲としてちゃんと成立するのか?」という疑問もありました。
しかし、気になったので、CDを買って聴いてみました。
実際に聴いてみると、めちゃくちゃかっこいい曲になっていて、「あの曲が、こんなにかっこうよくなるのか!」と衝撃を受けました。
曲のテンポはそこまで速くないですが、このくらいのテンポ感が、この曲には合っているなと思いました。
歌詞は、英語で、元の歌詞の意味を大きく外さないように英訳されていました。
そして、基本的には英語で歌っていますが、最後の「はじめてのチュウ」という部分だけ日本語にしている点も、うまいな~と感心しました。
この曲は、「Love Is a Battlefield」というマキシシングルに収録されています。
ちなみに、このシングルにはエルビス・プレスリーの「Can’t Help Falling In Love」のカバーも収録されていますが、こちらも良いカバーなのでおすすめです。
原曲はバラードですが、カバーの方は、勢いのあるパンクナンバーになっています。
気になった方は聴いてみてください。
「DIY精神」を持っている
パンクバンドは「DIY精神」を持ったバンドが多いです。
「DIY精神」というのは、「自分たちのことは、自分達でやろう」という考え方のことです。
そして、ハイスタも、「DIY精神」を持ったバンドと言えます。
その証拠に、1999年に「PIZZA OF DEATH(ピザ・オブ・デス)」というインディーズレーベルを設立し、バンド自ら運営をしていました。
元々、ハイスタは、「トイズファクトリー」というレーベルから音源をリリースしていました。
しかし、「ピザ・オブ・デス」を立ち上げてからは、そこからハイスタの音源を出すようになりました。
バンドがレーベルを運営すると、音楽制作以外の色んな作業が増えて、なかなか大変です。
しかし、自分たちでレーベルを運営すると、「バンドが思った形で音源がリリースできる」というメリットがあります。
きっと、「大変だけど、自分たちが納得する形で音源を出したいから、自分たちでレーベルをやろう」と思ってやっているのでしょう。
パンクバンドの原点を忘れず、「ずっとDIY精神を持ち続けているところ」も、このバンドの魅力だと思います。
インディーズにも関わらず、アルバムを100万枚以上売った
ハイスタは、パンクバンドの中では、かなり人気のあるバンドでした。
1995年にリリースしたアルバム「GROWING UP」は、海外版も含めると、70万枚以上売れました。
1997年にリリースしたアルバム「ANGRY FIST」も、50万枚以上売れました。
そして極めつけが、1999年に自主レーベルの「ピザ・オブ・デス」からリリースした、「MAKING THE ROAD」です。
このアルバムは、なんと、100万枚以上を売り上げる大ヒットとなりました。
「ミリオンセラー」のアルバムとなったのです。
90年代の後半では、ミリオンセラーのアルバムは結構ありました。
しかし、ミリオンセラーのアルバムは、ほとんど、メジャーレーベルからリリースされたものでした。
やはり、メジャーレーベルの方がお金に余裕があるので、宣伝にお金もかけられて、メディア露出も多くなります。
また、タイアップも、メジャーレーベルの方がつけやすかったりします。
当然、宣伝にお金をかけ、メディア露出を増やし、タイアップをつけたりすると、ヒットする確率は高まります。
そういった理由で、ミリオンセラーとなるアルバムは、メジャーレーベルから出ているものばかりという状況でした。
しかし、ハイスタの「MAKING THE ROAD」はインディーズの自主レーベルからリリースしています。
そのため、宣伝にはあまりお金をかけていません。
メディア露出も、あまりありませんでした。
当然、タイアップもついていません。
さらに、ハイスタは全編英語詞のバンドなので、歌詞の魅力が伝わりづらいというデメリットもあります。
そんな不利な状況にも関わらず、このアルバムは100万枚以上売れました。
これは、とんでもないことです。
このアルバムがなぜこんなに売れたかというと、「口コミの力」と「ハイスタというバンドに対する信頼感」が大きかったのだと思います。
ハイスタは、「口コミ」で大きくなっていったバンドだと思います。
ハイスタのCDを聴いたり、ライブを観て、「ハイスタは凄い!」と興奮した人がいたとします。
そうなると、その人は、ハイスタを誰かに教えたくなり、「このバンドは凄いよ」と友達に教えます。
その友達も、CDを買ったり、ライブを観たりして、同じように「ハイスタは凄い!」となって、別の友達にハイスタを勧めます。
そういった「口コミ」が広がることで、ハイスタの認知度は高まり、CDもたくさん売れるようになりました。
そして、ハイスタは、「MAKING THE ROAD」の前にも、「GROWING UP」「ANGRY FIST」という素晴らしいアルバムをリリースしています。
そのため、「次に出るアルバムも素晴らしいに違いない」と考えていたファンが多かったと思います。
「MAKING THE ROAD」を出す前に、既に、ハイスタは、「ファンからの信頼感が非常に高いバンド」になっていました。
そして、「MAKING THE ROAD」がリリースされた時、「ハイスタのアルバムだから間違いないだろう」という感じで、迷わず買ったファンが多かったと思います。
ハイスタには、「口コミの力」と「バンドに対する信頼感」があったからこそ、「インディーズレーベル」「宣伝にお金をかけない」「メディア露出が少ない」「全編英語詞」「タイアップなし」という不利な状況でも、100万枚以上売れたのではないでしょうか。
こういった不利な状況を覆したハイスタは、改めてかっこいいバンドだと思います。
バンド主催で大型音楽フェスを開催した
2023年現在、日本では、沢山の音楽フェスが開催されています。
「フェスに毎年参加する」という音楽好きも多く、完全に、日本の音楽ファンの中に音楽フェスは根付いています。
そして、10-FEETが主催する「京都大作戦」のように、バンドが主催する大型音楽フェスも増えてきています。
しかし、1990年代の中頃、日本に音楽フェスはほとんどありませんでした。
そんな状況の中、ハイスタは、「AIR JAM(エアジャム)」という大型ロックフェスの主催者となり、フェスを開催しました。
これは、当時としては非常に画期的なことでした。
エアジャムは、初回は1997年に開催され、翌年の1998年にも開催されました。
1997年といえば、フジロックが開催された年です。
フジロックは、日本の大型音楽フェスの先駆けと言われています。
そういった日本を代表するフェスが始まった時に、バンド主催でフェスを開催していたハイスタは、改めて凄いと感じます。
ハイスタが大型音楽フェスを開催できたのは、「CDが大ヒッしていた」ということも大きいでしょう。
CDの売り上げが好調で、金銭的に余裕があったので、大型フェスを開催する気になったかもしれません。
ただ、そうだとしても、バンドがフェスを主催することは、大きなリスクが伴います。
チケットが売れなければ、大赤字になり、バンドがその赤字を引き受けなくてはなりません。
また、悪天候によりフェスが中止になったりしたら、さらに大きな赤字となる可能性もあります。
そして、ハイスタがエアジャムを始めた90年代の日本では、音楽フェスがまだ根付いていませんでした。
そのため、「やってみないと、どうなるかわからない」という状況だったと思います。
2020年代の日本で音楽フェスを開催するよりも、遥かにリスクがある状況でした。
しかし、そんな状況でも、ハイスタはフェスを主催し、開催しました。
これはやはり、「DIY精神」によるものだと思います。
リスクは承知の上で、「プロモーターに任せるより、自分たちで主催した方が、納得のいくフェスになる」と考え、フェスの主催者になったのでしょう。
そして、実際に行うと、フェスは成功しました。
広い会場に、多くのパンクキッズが集まりました。
このフェスが面白かったのは、音楽だけでなく、「スケートボード」や「BMX」のライダーによるパフォーマンスも行われていたことでした。
まさに、「西海岸のストリートカルチャー」を体現したようなフェスになっていたと思います。
そして、エアジャム2000は、千葉マリンスタジアムで開催されました。
サマーソニックが行われていることでおなじみの会場です。
非常に広い会場にも関わらず、多くの観衆で埋め尽くされました。
バンド主催のフェスで、千葉マリンスタジアムが人で一杯になるというのは、本当に凄いことですね。
当時のハイスタの人気の高さが伺えます。
ただ、2000年にハイスタが活動休止すると、エアジャムもお休みとなりました。
しかし、2011年にハイスタが活動再開するとともに、エアジャムも復活します。
「エアジャム2011」には、ハイスタの活動を待ちわびたファンが多く駆けつけました。
その後も、エアジャムは、「2012」「2016」「2018」と開催されました。
やはり、ハイスタのことを語る時、エアジャムの存在は外せません。
今でこそ、日本でバンド主催のフェスは増えていますが、ハイスタはまさに「開拓者」と言えるでしょう。
ハイスタが「バンド主催でもフェスは開催できる」ということを示してくれました。
そのような前例があったことで、「自分たちでも、フェスを主催できるかもしれない」と勇気づけられたバンドマンも多かったのではないでしょうか。
そして、もしハイスタがいなければ、バンド主催のフェスが日本でこんなに増えることはなかったかもしれません。
そういう意味でも、ハイスタは偉大な存在です。
エアジャムは、「ハイスタの持つDIY精神」が反映されていて、ハイスタの魅力が詰まったイベントだと思います。
年齢を重ねても「やんちゃな雰囲気」を持ち続けている
この記事を書くにあたって、「ハイスタの魅力は何だろう?」とじっくり考えましたが、「いつまでもやんちゃな雰囲気を持っている」ところも大きな魅力だなと改めて感じました。
ハイスタは、20代前半でデビューしています。
当然ながら、デビューの頃は、まだ若いのでやんちゃです。
しかし、若い頃だけでなく、年齢を重ねてからも、すっとやんちゃなイメージを保っています。
ハイスタは、活動休止期間を経て、2011年に活動を再開します。
2011年時点で、ハイスタのメンバーは、「おじさん」と呼ばれるような年齢になっていました。
しかし、ステージに出てきた3人は非常に若々しく、全くおじさんに見えません。
20代の頃のような「やんちゃな雰囲気」がしっかりと残っています。
それは、演奏が始まっても変わりません。
中年と呼ばれるような年齢になっても、「パワフルに押しまくる、やんちゃな演奏」を聴かせてくれました。
そういう姿を見ると、良い意味で「変わってないな~」と思い、安心しました。
やはり、「年齢を重ねても、変わらずにやんちゃな人」というのは、見ていて楽しいです。
その後、さらに年齢を重ねて、3人が50代に突入しても「やんちゃなイメージ」は変わりませんでした。
最近、ハイスタは、あまり活動していませんでしたが、「またそのうち、3人で集まって、やんちゃな姿を見せてくれるだろう」と思っていました。
しかし、恒岡さんの訃報により、それがもう叶わなくなってしまったのは非常に残念です。
恒岡さんは、難波さんや横山さんと比べると、やんちゃさは、やや控えめです。
ただ、一度ステージに上がってドラムを叩くと、年齢を重ねても、やんちゃで良いドラムを叩いていました。
しかし、ステージに上がればやんちゃなドラムを叩いていましたが、普段話している姿を見ると、「穏やかで優しそうだな」という印象を受けました。
恒岡さんが普段話している様子は、下の動画を見てみてください。
まとめ
ここまで、自分が思う「ハイスタの魅力」について色々と語ってきました。
ざっと魅力を紹介してきましたが、ここで紹介したこと以外にも、数えきれないくらい沢山の魅力があるバンドです。
改めてハイスタというバンドを振り返ってみると、「本当に偉大なバンドだな」と思います。
日本の音楽界には、「メロコア」と呼ばれるシーンがあり、メロコアが好きな音楽リスナーも沢山います。
ただ、もしハイスタというバンドがなければ、日本にこんな大きなメロコアシーンが生まれていたかは疑問です。
あったとしても、もっと小さなものになっていた可能性が高いと思います。
それくらい、多大な影響力を与えたバンドです。
ハイスタは、どちらかといえば、フロントの難波さんと横山さんにスポットライトが当たりがちです。
しかし、恒岡さんがハイスタのドラマーでなかったら、ここまでの人気バンドにはなっていなかったのではないでしょうか。
ハイスタには、「この3人だからこそ出せる音」がありました。
このバンドは、3ピースバンドです。
そのため、普通は、「1+1+1」で「3」となります。
しかし、ハイスタの場合は、3人揃うととんでもないパワーが出て、「1+1+1」が「3」ではなく、「6」にも「10」にもなるようなバンドでした。
ハイスタというバンドには、「バンドマジック」がありました。
だからこそ、これほど多くの人の心をつかんでいるのでしょう。
難波さんや横山さんは、それぞれのバンドのライブなどで、ハイスタの曲を演奏することもありました。
しかし、そういう場でハイスタの曲を聴いても「なんだか違う」という印象は拭えませんでした。
そういう印象になってしまったのは、「ドラムが恒岡さんではない」という理由が大きかったのではないでしょうか。
やはり、恒岡さんの非常にパワフルでテクニックも感じられるドラムがなければ、ハイスタの音は完成しないと思います。
今後、もしかすると、サポートのドラムを入れて、ハイスタが再始動する可能性も0ではありません。
しかし、そうなってしまうと、「ハイスタと似ているけれど別のバンド」という感じになってしまうのではないでしょうか。
やはり、恒岡さんが叩いていないと、「ハイスタじゃない」という感じになりそうなので。
恒岡さんが亡くなったことにより、残念ながら、オリジナルメンバーのハイスタのライブを生で見ることは不可能になってしまいました。
しかし、恒岡さんという素晴らしいドラマーが叩いたハイスタの音源は、沢山残されています。
そういった音源を改めて聴き直して、「ハイスタの素晴らしさ」と「恒岡さんのドラムの素晴らしさ」を感じることにしましょう。
恒岡さんが叩いたハイスタの音源は、今後もずっと聴き続けられるべき、素晴らしい音楽だと思います。
また、ライブDVDも色々出ていますので、「ライブの雰囲気を体感したい」という方は、ライブDVDを観てみてください。
そして、バンドのことをもっと深く知りたいという方は、「SOUNDS LIKE SHIT」というハイスタのドキュメンタリーのDVDを観るのもおすすめです。