2023年の10月、新宿区が主催する「SHIN-ONSAI(シンオンサイ)」という音楽フェスに行ってきました。
2日間参加しましたが、今回は、10月7日(土)の1日目の模様をレポートします。
「SHIN-ONSAI」について
ライブレポートを行う前に、まずは、「シンオンサイ」について簡単に解説します。
シンオンサイは、新宿区が主催している音楽フェスです。
このフェスが始めて行われたのは、2018年です。
その後、コロナの影響があった2020年はお休みしたようですが、基本的に、毎年、10月に開催されています。
自治体が主催のイベントでありながら、毎回、コアな音楽ファンを唸らせるような、絶妙なラインナップになっています。
このあたりは、「さすが新宿区だな」と感心してしまいます。
ちなみに私は、2018年に行われた初回に参加しています。
その際も、「カネコアヤノ」「ミツメ」「オウガ・ユー・アスホール」などが出演し、コアな音楽ファンが好むようなラインナップとなっていました。
参加してみて、「非常に面白い音楽フェスだな。この先も続いてほしいな」と思いました。
会場について
会場は、新宿文化センターです。
大ホール
メインのライブは、新宿文化センターの大ホールで行われていました。
ここの大ホールは、クラシックのコンサートが行われるような、非常に立派なホールです。
大ホールで見る場合は、椅子に座って見ます。
この椅子は、かなりしっかりしていて、座り心地の良い椅子になっています。
小ホール
3階には、小ホールがあり、ここでもライブが行われていました。
小ホールには椅子はなく、スタンディングで見る形です。
「広めのライブハウス」といった印象です。
ただ、床が木なので、普通のライブハウスよりは、少しぬくもりがあるような感じがしました。
ずっと座ってライブを観るのも、それはそれで疲れたりするので、こういうスタンディングのステージもあるのは、良いなと思いました。
エントランスステージ
入り口を入ってすぐのところに、「エントランスステージ」も用意されていました。
ただ、「ステージ」といっても、特に高さが高くなってはいません。
「簡易的なステージ」といった感じです。
ここでは、基本的には、「小ホールのパブリックビューイング」が行われていました。
画面とスピーカーが置いてあり、小ホールに行かなくても、小ホールの映像を見ながら、音を聴くことができました。
このスピーカーは、良いスピーカーが使われていて、パブリックビューイングでありながら、かなり臨場感がありました。
また、小ホールで演奏が行われていない時間帯は、サックスのライブも行われていました。
このエリアは、チケットなしでも、観ることができるエリアになっていました。
飲食スペース
2階には、飲食スペースも用意されていました。
飲食スペースには、買ってきたものを持ち込んで、食べることができました。
会場のすぐ近くには、コンビニやスーパーもあったので、そこで買ってきたものを、飲食スペースで食べていました。
この飲食スペースは、広々としていて、なかなか居心地が良かったです。
物販エリア
大ホールのドアの前のスペースには、物販コーナーも設置してありました。
ここでは、出演アーティストのCDやグッズが販売されていました。
また、アーティストによっては、メンバー本人が物販コーナーに立って、販売したりもしていました。
チケット代について
今回のライブのチケット代は、1日券が4000円、2日通し券が7000円でした。
このチケット代は、非常に安いと感じます。
音楽フェスでこのチケット代は、破格です。
おそらく、新宿区が主催ということで、あまり採算のことを考えず、安い価格設定にしているのだと思います。
この姿勢は、素晴らしいと感じます。
「安い価格設定にして、良いアーティストのライブを沢山の人に聴いてもらえる」という点は、自治体が主催している意義を感じます。
ライブを観たアーティスト
ここからは、私が観たアーティストのライブについて語っていきます。
m/lue.(ミリュー)
まずは、オープニングアクトとして、大ホールで行われたミリューのライブを観ました。
若手のシンガーソングライターのようです。
穏やかで、心に染み込むような音楽が良かったです。
そして、ホールでのライブだったので、「会場の音がめちゃくちゃ良いな」と感じました。
「この素晴らしい音のホールで、色んなアーティストのライブを聴けるのか」と思うと、非常にワクワクしてきました。
蓮沼執太フィル
蓮沼執太の音楽は、音源では聴いていましたが、ライブを観るのはこれが初めてです。
今回は、「フィル」という大編成なので、ホール会場にはぴったりです。
「起点」「テレポート」といった、ソロでリリースしていた曲も、今回のライブでやっていました。
この辺の曲は元々好きだったので、やってくれて嬉しかったです。
また、音楽性の幅が広く、歌メインの曲だけでなく、インストメインの曲もあったりして、楽しめました。
「フィル」というと、「おとなしめな感じなのかな?」と思っていましたが、実際はツインドラムでビートが効いていて、ギターを歪ませている曲もあり、思ったよりロックな印象を受けました。
OGRE YOU ASSHOLE
オウガ・ユー・アスホールは、個人的に大好きなバンドなので、「ホールでどんな音になるのかな?」と、始まる前からワクワクしていました。
ライブは、反復するビートから始まり、最初はずっとインストでした。
2曲目の「待ち時間」から、ボーカルが入ってきました。
ただ、ボーカルにエフェクトが強めにかかっていて、歌を聴かせるというより、「歌も楽器の一つとして使う」といった印象でした。
曲が変わっても、似たようなビートが反復しているため、頭がボーっとしてきて、トランス状態に入ってきました。
時空が歪むような感じがして、段々と、これが夢なのか現実なのかわからなくなるような感覚を覚えました。
そして、基本的には同じようなビートを続けながらも、「朝」の時はきっちりと盛り上がる部分も作っていて、この構成の巧みさはさすがだなと思いました。
夢と現実との間を漂いながら、あっという間にライブが終わりました。
持ち時間は50分でしたが、体感時間は20分くらいでした。
もしかすると本当に、時空が歪んでいたのかもしれません。
今回は、新曲のEPに入っている曲ばかりを演奏していました。
フェスでも、代表曲をやらずに、最新の曲ばかりで固めるオウガの姿勢は凄いなと感じました。
この、「客に媚びずに、自分たちがやりたい音楽を貫く姿勢」は、とてもかっこいいです。
オウガのライブは沢山見ていますが、最近は、「ミニマルで、トランシーで、サイケデリック」という路線をさらに深化させている感じがします。
オウガは、今現在、日本有数の凄まじいライブをやっているバンドだと思います。
ただ、ライブのクオリティが凄まじく高い割に、国内外の人気がそこまで高くないのは、もったいないと感じてしまします。
そんな感じで、オウガの過小評価具合が気になったりはしますが、この先どこまで進化していくのか、オウガのライブからは目が離せません。
セットリスト
1.新曲?
2.待ち時間
3.家の外
4.ただ立っている
5.朝
えんぷてい
「小ホールのライブも少し観よう」と思い、小ホールに移動して、「えんぷてい」のライブを観ました。
「えんぷてい」は、YouTubeでシンオンサイの予習をした時に少し気になっていたので、ライブを観たいと思っていました。
ライブを観ると、ボーカルの人が、曲前や曲間に丁寧に挨拶していたのが印象的でした。
なんだか、性格が良さそうな感じが伝わってきて、好印象でした。
音楽は、「少し切なさのあるロック」という感じです。
曲やメロディも、良い感じです。
「ミツメ」というバンドに少し似ています。
演奏面では、「ドラムが非常にうまいな」と感じました。
所々に細かい刻みを入れ込んできて、聴いていて飽きさせません。
「ロックだけでなく、ジャズを叩かせても、良いドラムを叩けそうだ」と思うようなドラムでした。
そのため、途中からは、ドラムを中心に聴いていました。
そして、ギターの人の髪型は、まるでジミヘンのようなアフロでした。
ファッションも70年代風だったので、「ジミヘンが好きなんだろうな」という感じが伝わってきました。
ギターは、基本的には歪ませずに、クリーンなトーンで演奏していました。
ただ、後半の曲では、かなりギターを歪ませた曲もあり、「こういうギターのトーンも使うんだ」というギャップがありました。
そして、MCで、12月に行うワンマンライブの告知を行っていましたが、「そこで重大発表をします」と言っていました。
その重大発表が何なのか、気になってしまいました。
全体的に、そこまで派手さはないですが、年齢が若そうな割に曲や演奏がしっかりしていて、「良いバンドだな」と思いました。
world’s end girlfriend
ワールズエンド・ガールフレンドは、だいぶ昔に、一度だけ、ライブハウスでライブを観たことがありました。
ただ、今回はホールということで、「ホールだとどんな感じになるんだろう」と気になっていました。
メンバーは、全員、真っ黒の衣装に身を包んでいました。
ライブは、音楽だけでなく、バックに映像も映していました。
ホールなので、映像も大きく、ライブハウスで観るより、だいぶ迫力がありました。
全体的にダークな世界観で、独特の雰囲気があるライブでした。
映像も、どこかダークな雰囲気が漂っていました。
ライブ中、時折、爆音になる部分もありました。
オウガ・ユー・アスホールのライブも爆音でしたが、それとはまた少し違った爆音でした。
オウガの爆音は、どこか音がモヤっとしているような爆音です。
それに対して、ワールズエンドの方は、「突き刺すような鋭い爆音」という感じだったので、耳へのダメージは、ワールズエンドの方が大きい感じがしました。
聴き比べると、「同じ爆音でも、バンドによって結構違いがあるな」というのがわかって、興味深かったです。
MCは全くなかったですが、これはおそらく、「世界観を崩さないようにしよう」と考え、あえて全くMCを行わなかったのだと思います。
このバンドは、世界観がダークなので、正直、好みは分かれる気がします。
ただ、こういったダークな世界観が好きな人には、非常に刺さるバンドだと思います。
児玉真吏奈
小ホールで、児玉真吏奈さんのライブを観ましたが、完全な初見でした。
予備知識も全くない状態で観ました。
観る前は、「本名っぽいから、ギターの弾き語りなのかな?」と思っていましたが、実際は、全然違いました。
PCから電子音のトラックを流して、その上で、ささやくように歌っていました。
そのトラックも、あまり聴いたことのないトラックで、斬新でした。
野菜をかじるような音をサンプリングした曲もありました。
歌も、声質が良く、聴いていて心地よかったです。
後で、ネットで調べると、児玉真吏奈さんは関西のアンダーグラウンドシーンで活動しているミュージシャンのようですね。
面白い音楽だったので、できればもっと長くライブを聴いていたかったですが、トリのtoeが始まりそうだったので、ライブの途中で小ホールを出ました。
toe
本日のトリは「toe」です。
個人的に好きなバンドですが、最後にライブを観たのは10年以上前だったので、久々のライブです。
久々にライブを観るということに加え、ホールということで、期待感は高まります。
ライブが始まると、「さすが」と言いたくなるような、圧巻の演奏でした。
音もホールのため素晴らしく、ライブハウスで聴くより、高音部分がきれいに聴こえる感じがします。
初期のtoeは、超絶テクのドラムをメインに聴かせる曲が多かったですが、段々と、あえてドラムの手数を抑えたような曲も増えている印象です。
そういった曲の幅の広さも良いなと思いました。
また、静かに聴かせるようなパートもあれば、熱い演奏で盛り上げる場面もあり、メリハリもしっかり効いていて、素晴らしかったです。
そして、演奏中は非常に洗練された音を出していますが、MCになると急にゆるくなるのが面白かったです。
基本的に、ギターの山嵜さんがMCをしていましたが、「酒でも飲んでいるのかな?」というような、ゆるいMCでした。
まるで、おっちゃんが、近所の人と雑談をしているようなMCです。
ただ、楽曲とMCの雰囲気のギャップも、これはこれで面白くて良いなと感じました。
今まで、toeは、ほとんどホールでライブをした経験がないようで、山嵜さんは「みんな座っているとやりにくい」と言っていました。
ただ、聴く側からすると、ホールだとギターの高音もきれいに聴こえるので、「音的に、ホール向きのバンドだな」という印象を受けました。
これを機に、今後も、時々、ホールでもライブをやってほしいところです。
インストバンドならではの「音の素晴らしさ」を堪能できて、本当に素晴らしいライブでした。
まとめ
シンオンサイの1日目のレポートを行ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
1日ずっとライブを観たので、観終わった後は、少し疲れもありました。
ただ、基本的に椅子に座って観ることができたので、スタンディングの音楽フェスに比べると、だいぶ疲れは少ない感じがしました。
そして、疲れよりも、「良いライブを沢山観られた!」という満足感のほうが先に決ました。
色んなジャンルのアーティストのライブを一度に観ることができて、楽しかったです。
初めてライブを観たアーティストもいましたが、「つまらないな」と思ったアーティストは0で、どれも良かったです。
ただ、その中でも、個人的に、「オウガ・ユー・アスホール」と「toe」が特に良かったです。
この二組は、正直、別格だなと感じました。
オウガとtoeは、楽曲がどうこうという以前に「音そのものが素晴らしい」と思えるようなバンドです。
そんなバンドの演奏を、ホールの素晴らしい音響で聴けるのは、贅沢なことだなと感じました。
こういった感じで、大満足の1日目でした。
ちなみに、10月8日(日)の2日目の模様もブログ記事にしましたので、興味のある方は、そちらも読んでみてください。