ブルーハーツ「僕の右手」の歌詞の考察を行います。
「僕の右手」は、1988年にリリースされたサードアルバム「TRAIN-TRAIN」に収録されている曲です。
また、ベストアルバムにも収録されています。
曲調は、ストレートなパンクナンバーで、ファンからも根強い人気の曲です。
また、歌詞は、『僕の右手を知りませんか?』というフレーズがとても印象に残ります。
歌詞を聴くと、多くの人が「何で右手なの?」という疑問を持つと思います。
この曲は、ハードコアパンクバンド「GHOUL(グール)」のボーカリストだったMASAMI(マサミ)氏をモチーフにした曲だと言われています。
マサミ氏は、子供の頃のダイナマイトの事故により、右手首から先を失ってしまいました。
そんなハンデもありながらも、パンクバンドのボーカリストになります。
そして、ボーカリストとしては、カリスマ性があったようです。
しかし、1990年に、ステージで倒れます。
昏睡状態のまま肺炎を併発し、1992年に、34歳の若さで亡くなりました。
ちなみに、「リルサウンド」のサイトで、マサミ氏について詳しく書いてある記事があるので、興味のある方は、読んでみてください。
「僕の右手」は、1988年にリリースされたので、マサミ氏を追悼して書かれた曲という訳ではありません。
おそらく、甲本ヒロトは、「ボーカリストとしてのマサミ氏」に魅力を感じていたのではないでしょうか。
右手首から先が無い状態で、迫力のある歌を歌うマサミ氏に感銘を受けて、この曲を書いたのではないかと思います。
歌詞を見ると、「マサミ氏のことを歌っているんだろうな」と思わせるような部分が沢山あります。
しかし、この曲は「マサミ氏のことだけを歌っている曲」という訳ではないと思います。
マサミ氏に向けたメッセージも入っていますが、マサミ氏以外の人が聴いても、グッとくるフレーズが沢山入っています。
そのため、今回は、この曲の歌詞を考察して、自分なりの解釈を加えていきます。
特に、「右手」という歌詞にどんな意味が込められているのかを探っていきます。
この曲の作詞・作曲者は、甲本ヒロトです。
歌詞の全文は、下記のサイトで見られます。
「僕の右手」の歌詞の考察
僕の右手を知りませんか?
冒頭は、こんな歌詞から始まります。
僕の右手を知りませんか? 行方不明になりました
指名手配のモンタージュ 街中に配るよ
マサミ氏をモチーフにした曲なので、主人公は「右手の無い人」のようです。
右手がないので、『僕の右手を知りませんか?』と探しているようです。
ただ、この『右手』という歌詞は、単に右手のことだけを言っているのではなく、裏に違う意味も込められていそうです。
『指名手配のモンタージュ 街中に配るよ』というのは、面白い歌詞ですね。
「右手のモンタージュ写真」を配ることは、普通はありえないですが、これは、ヒロトなりのユーモアだと思います。
夢に飢えた野良犬 今夜吠えている
続きの歌詞も見ていきます。
今すぐ捜しに行かないと
さあ 早く見つけないと
夢に飢えた野良犬 今夜吠えている
この部分では、『夢に飢えた野良犬』という歌詞が気になります。
これは、どういう意味なのでしょうか?
自分としては、「貴重なものを自分のものにしようと狙っている奴がいる」という意味だと解釈しました。
1番のサビの歌詞
1番のサビの歌詞を見ていきます。
見た事もないような ギターの弾き方で
聞いた事もないような 歌い方をしたい
だから 僕の右手を知りませんか?
この曲の主人公は「バンドマン」という設定でしょう。
バンドマンにとって、「右手がない」ということは、大きなハンデです。
右手がないと、普通はギターも弾けませんし、マイクも左手でしか握れません。
そのため、「右手がないと、良いパフォーマンスができない」と思い、右手を探しているのでしょう。
瞳の奥に眠りかけた くじけない心
2番の歌詞も見ていきます。
人間はみんな弱いけど
夢は必ずかなうんだ
瞳の奥に眠りかけた くじけない心
この部分は、なかなかグッとくる歌詞になっています。
『人間はみんな弱いけど』という歌詞からは、「人間はみんな、どこか弱い部分を持っている」というメッセージが伝わってきます。
そして、『夢は必ずかなうんだ』と言っていますが、これは、心の底から「絶対にかなう」と思っている訳ではないでしょう。
「夢は、かなわないかもしれないれど、必ず叶うと信じよう」と自分に言い聞かせているのだと思います。
『瞳の奥に眠りかけた くじけない心』というのは、「色々とうまくいかなくて、くじけそうになったけど、心の底に眠っていた、くじけない心を思い出した」という意味でしょう。
今日も 明日も あさっても 何かを捜すでしょう
さらに歌詞を見ていきます。
いまにも目からこぼれそうな 涙の理由(わけ)が言えません
今日も 明日も あさっても 何かを捜すでしょう
『今にも目からこぼれそうな 涙の理由(わけ)が言えません』というのは、「何でここまで悲しくなるんだろう」と、理由がはっきりわからず戸惑っているということでしょうか。
そして、少しひっかかるのは、『何かを捜すでしょう』という歌詞です。
これを見ると、「あれ、右手を捜していたのではなかったの?」と思ってしまいます。
この歌詞から、「主人公は、単に右手だけを捜していたのではない」ということがわかります。
では、一体何を捜していたのでしょうか?
最後まで歌詞を見ると、なんとなくわかってきます。
2番のサビの歌詞
2番のサビの歌詞も見ていきましょう。
見た事もないような マイクロフォンの握り方で
聞いた事もないような 歌い方するよ
だから 僕の右手を知りませんか?
主人公は、結局、『右手』を捜したけれど、見つけることができなかったようです。
ただ、この歌詞を見ると、「右手は見つからなかったけれど、それでもなんとかしよう」という主人公の意志を感じます。
2番のサビの歌詞は、1番のサビの歌詞と似ていますが、少し違います。
そのちょっとした違いに、「主人公の心の変化」を感じます。
1番のサビの歌詞では、「ギターを弾きたい」という内容が入っていました。
しかし、2番のサビには、ギターに関することは歌われていません。
これはおそらく、主人公は、右手が見つからなかったことで、ギターを弾くことは諦めたようです。
ただ、音楽活動自体を諦めたのかというと、そうではありません。
『見た事もないような マイクロフォンの握り方で』という歌詞を見ると、右手がなくとも、マイクを握っているようです。
そして、1番のサビの歌詞では、『聞いた事もないような 歌い方したい』となっていましたが、ここでは、『歌い方するよ』となっています。
そのため、1番のサビの歌詞の時点では歌っていませんでしたが、2番のサビの時点では、「もう既に、歌を歌っている」ことがわかります。
きっと、「右手がなくても歌を歌うんだ」という風にふっきれたのでしょう。
ただ、最後に『僕の右手を知りませんか?』とあるので、まだ少し、右手に対して未練が残っているのかもしれません。
ただ、少し未練が残っていたとしても、「それでもやるんだ」という主人公の気合を感じます。
『右手』の意味について
歌詞を一通り見てきましたが、ここで、改めて『右手』の意味について考えてみましょう。
歌詞をじっくり見ていくと、この『右手』という歌詞には、別の意味も込められているように思います。
右利きの人にとって、「右手」というのは、非常に重要なものです。
何をするにも、大抵、右手を使うので。
自分としては、この『右手』という言葉には、「その人にとって、非常に大事なもの」という意味も込められていると推測します。
この歌は、「単に右手を失った人の歌」というより、「自分にとって非常に大事なものを失った人の歌」と言うことができるでしょう。
この歌では、「大事なものを失くして、戸惑い、その後、失くしたことを受け入れる過程」が描かれています。
そして、失くしたことを受け入れつつも、「失くしたものに対する未練」も残ってしまう部分もリアルです。
こういったことをふまえると、この歌詞は、「右手がある人」にとっても、響く内容となっています。
右手があったとしても、「大事なものを失くした経験」がある人ならば、「わかる」と共感できる内容なのではないでしょうか。
そして、主人公の「失くしたことを受け入れる姿」に、勇気づけられる人も多いのではないでしょうか。
聴き終わると、「大事なものを失くしたとしても、なんとか立ち上がろう」という気分になるような曲です。
まとめ
ブルーハーツ「僕の右手」の歌詞の考察を行ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
『僕の右手を知りませんか?』という歌詞をパッと聴くと、つい、「歌詞にあんまり意味はないのかな?」と思ってしまったりします。
しかし、歌詞をよく見てみると、非常に深い意味が隠されていることがわかります。
「意味がないように見えて、実は深い意味がある」というのは、ヒロトらしいなと感じます。
この曲の歌詞について、あまり深く考えて聴いていなかった方は、この記事の内容をふまえつつ、改めてこの曲を聴き直してみてください。
歌詞の意味を考えながら聴くと、少し違った聴こえ方になると思います。