ブルーハーツ「情熱の薔薇」の歌詞の考察を行います。
「情熱の薔薇」は、1990年にリリースされた、ブルーハーツ9枚目のシングルです。
オリジナルアルバムでは、1990年にリリースされた「BUST WASTE HIP」に収録されています。
また、ベストアルバムにも収録されています。
この曲は、CMなど、色んなところで使われてきた曲なので、一度は聴いたことがある人が多いと思います。
曲調は、ブルーハーツらしい、ストレートなパンクナンバーとなっています。
ただ、歌詞に関しては、抽象的で意味深な表現が多く、「どういう意味だろう?」と思ってしまったりもします。
そこで、ここからは、この曲の歌詞を考察して、歌詞に隠された意味を探っていきます。
この曲の作詞・作曲者は、甲本ヒロトです。
歌詞の全文は、下記のサイトで見られます。
「情熱の薔薇」の歌詞の考察
永遠なのか本当か
まずは、冒頭の歌詞を見ていきます。
永遠なのか 本当か
時の流れは続くのか
いつまで経っても変わらない
そんな物 あるだろうか
冒頭の歌詞では、「永遠なんてあるのか?」と言っています。
これは、「このダイヤモンドは永遠の輝きですよ」と売りつけてくる宝石商のような人に対して、「本当に永遠なんかあるの?」と疑問を投げかけているのではないでしょうか。
甲本ヒロト自身は、「永遠なんて存在しない」と考えていることが、この歌詞からうかがえます。
ダイヤモンドというのは、確かに、この先も、ずっとなくなりはしないかもしれません。
ただ、全く手入れをしないと、光が鈍ってきたりします。
それを考えると、宝石商が「このダイヤモンドは、永遠の輝きですよ」というのは、誇張した表現だということがわかります。
また、『いつまで経っても変わらない そんな物 あるだろうか』という歌詞で、ヒロトは、「いつまで経っても変わらないものなんてあるのか?」と疑問を投げかけています。
人は、つい「安定してずっと変わらないもの」を求めてしまったりしますが、きっとヒロトは、「いつまで経っても変わらないものなんかない」とも言いたいのだと思います。
でたらめだったら面白い
さらに歌詞を見ていきます。
見てきた物や聞いた事
今まで覚えた全部
でたらめだったら面白い
そんな気持ち分かるでしょう
この部分は、なかなか面白い歌詞ですね。
普通は、『見てきた物や聞いた事 今まで覚えた全部』がでたらめだったとしたら、「自分は一体、今まで何をしていたんだ」と絶望してしまうでしょう。
しかし、ヒロトは、逆にそれを「面白い」と言っています。
こういうところは、「さすがヒロトだな」と思います。
この歌詞には「常識を疑え」というヒロトからのメッセージが込められている気がします。
ヒロトは、この歌詞を通じて、「みんな、常識に従って生きているけれど、もしかしたら、常識というのはでたらめかもしれないよ。だから、常識だからって、鵜呑みにしちゃダメだ」ということを言いたいのかもしれません。
心のずっと奥の方
次の歌詞も見ていきましょう。
答えはきっと奥の方
心のずっと奥の方
涙はそこからやって来る
心のずっと奥の方
この部分では、『心のずっと奥の方』という歌詞が印象的です。
『心のずっと奥の方』とは、何を指しているのでしょうか?
これはきっと、「本心」のことだと思います。
自分の本心に語りかけて、本心の声を聞けば、おのずと答えはわかるということでしょう。
また、「涙」も、心から悲しいと思った時に出てくるということを言いたいのでしょう。
なるべくいっぱい集めよう
さらに歌詞を見ていきます。
なるべく小さな幸せと
なるべく小さな不幸せ
なるべくいっぱい集めよう
そんな気持ち分かるでしょう
この部分も、非常に面白い歌詞です。
もし、この部分が、「なるべく小さな幸せを なるべくいっぱい集めよう」だったら、「わかる」という人が多いでしょう。
しかし、ここでは、『なるべく小さな不幸せ』も『なるべくいっぱい集めよう』と言っています。
こういう部分が「さすがヒロトだな」と思ってしまったりします。
普通は、小さな不幸せであっても、不幸せならば、無い方が良いと思うはずです。
しかし、ここで『なるべく小さな不幸せ』を『なるべくいっぱい集めよう』と言っているのは、なぜなのでしょうか?
自分としては、この部分の歌詞は、「日常のささやかなことを大切にしよう」という意味だと解釈しました。
日常には、「ささやかな幸せ」が溢れていますが、みんな「大きな幸せ」にばかり目がいって、「ささやかな幸せ」を見過ごしがちです。
しかし、「ささやかな幸せ」を見過ごさず、一つ一つ味わえば、「大きな幸せ」がなくとも、満足感を得られます。
そして、日常には「ささやかな不幸せ」も溢れていますが、「ささやかな不幸せ」も、考え方によっては、それほど悪いものではありません。
「ささやかな不幸せ」を経験することで、「今後は気をつけよう」と心がけたりするからです。
例えば、料理をしていて、「煮込みすぎて失敗してしまった」ということがあったとしましょう。
これは、「小さな不幸せ」と言えます。
ただ、一度こういう失敗をすると、「きちんとタイマーをかけよう」とか「煮込んでいる途中で硬さを確認しよう」など、色々と学べたりします。
失敗から学ぶことは、悪いことではありません。
それを考えると、この歌詞では、「小さな失敗から、実は色々と学べるんだよ」と言いたいのではないでしょうか。
私としては、この部分の歌詞には、「日常のささやかな部分を大切にして生きよう」というヒロトからのメッセージが込められているような気がします。
情熱の真っ赤な薔薇を 胸に咲かせよう
最後のサビの歌詞も見ていきます。
情熱の真っ赤な薔薇を 胸に咲かせよう
花瓶に水をあげましょう
心のずっと奥の方
『情熱の真っ赤な薔薇を 胸に咲かせよう』とは、どういう意味なのでしょうか?
これは、「燃えるような情熱を心の中に持とう」という意味だと思います。
「燃えるような情熱」のことを『真っ赤な薔薇』と例えているのでしょう。
次の『花瓶に水をあげましょう』というのは、「情熱がさらに燃え上がるようなことをしよう」と言っているのだと思います。
ヒロトの中には、「ロックが好き」という情熱があります。
そして、バンドを組んだり、曲を作ったりすることで、「ロックが好き」という情熱は、さらに燃え上がります。
この例だと、バンドを組んだり、曲を作ったりすることが「花瓶に水をあげる」ということになります。
そのため、この歌詞では、「心に何か情熱があったら、その情熱をさらに燃え上がらせることをしよう」と言っているのでしょう。
そして、その情熱は『心のずっと奥の方』にあると言っています。
心の奥の方にあると、自分がどんな情熱を持っているのか、なかなかわからなかったりします。
しかし、自分に正直になって、心の奥の本心を探れば、きっと情熱を燃やせるものが見つけられるのではないでしょうか。
この歌詞を見ていて、そんなことを思いました。
まとめ
ブルーハーツ「情熱の薔薇」の歌詞の考察をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
この曲は、ブルーハーツ中期の作品です。
そのため、初期の作品と比べると、歌詞のストレートさは薄れているかもしれません。
ただ、それでも、歌詞をよくよく見ると、甲本ヒロトらしいまっすぐなメッセージを読み取れます。
「情熱の薔薇」は、「ヒロトのピュアな心」がうまく反映されている歌詞だと感じます。
この曲の歌詞について、あまり深く考えずに聴いていた方は、この記事の内容を頭に入れつつ、曲を聴き直してみてください。
そして、歌詞の深さに気づくと、この曲がさらに魅力的に感じるのではないでしょうか。