ブルーハーツ「TRAIN-TRAIN(トレイン・トレイン)」の歌詞の考察を行います。
「トレイン・トレイン」は、オリジナルアルバムでは、1988年にリリースされた「TRAIN-TRAIN」に収録されています。
また、ベストアルバムにも収録されています。
YouTubeのブルーハーツの公式サイトでMVが見れるので、まだ聴いたことがない方は、まずはこのMVを見てみてください。
この曲は、ブルーハーツの曲の中でも、非常に人気も知名度も高い曲です。
メロディ良いですが、歌詞も本当に素晴らしいです。
そこで今回は、「トレイン・トレイン」の歌詞について、深く考察していきます。
この曲の作詞・作曲者は、真島昌利(マーシー)です。
歌詞の全文は、下記のサイトで見られます。
- 「TRAIN-TRAIN」という曲名について
- 栄光に向かって走る汽車
- 弱い者達がさらに弱い者をたたく
- 見えない自由がほしくて 見えない銃を撃ちまくる
- ここは天国じゃないんだ かといって地獄でもない
- サビの歌詞
- あなたが生きている今日は どんなに素晴らしいだろう
- 聖者になんてなれないよ だけど生きている方がいい
- まとめ
「TRAIN-TRAIN」という曲名について
歌詞の考察をする前に、まずは、「TRAIN-TRAIN」という曲名について考察してみたいと思います。
タイトルに使われている「TRAIN(トレイン)」というのは、電車のことではないと思います。
マーシーは、おそらく、「トレイン」という単語は、「汽車」という意味で使っているのだと思います。
その証拠に、MVでも、汽車の映像が使われています。
栄光に向かって走る汽車
ここからは、歌詞の考察をしていきます。
この曲は、こんな歌詞から始まります。
栄光に向かって走る あの列車に乗って行こう
はだしのままで飛び出して あの列車に乗って行こう
この部分の歌詞は、おそらく、「アメリカのゴールドラッシュ時代の汽車」というイメージではないかと思います。
「貧しい街で育った若者が、一攫千金を夢見て、汽車に飛び乗る」といった感じではないでしょうか。
弱い者達がさらに弱い者をたたく
次に出てくる歌詞は、胸に刺さるものがあります。
弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく
その音が響きわたれば ブルースは加速していく
「弱い者」は、日々、強い者にたたかれているので、うっぷんが溜まっていたりします。
そのため、弱い者は、さらに弱い者をたたいて、憂さ晴らしをする場合があります。
これはとても悲しいことですが、世の中では、こういったことが沢山起こっています。
『弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく』という歌詞は、そんな厳しい現実をうまく描写しています。
本当は、弱い者達が団結して強い者を叩けばいいですが、なかなかそうはならず、「弱い者がさらに弱い者を叩く」という負の連鎖が世界中で起こっています。
また、この部分では『ブルースは加速していく』という歌詞も印象的です。
ブルースというのは、アメリカの黒人が作った音楽です。
ブルースが生まれた当時のアメリカの黒人の状況は、今よりもずっと厳しいものでした。
そのため、ブルースの曲には、「日々の悲しみ」を歌ったものも多いです。
ただ、それはある意味、当時のアメリカの黒人が、「ブルースの曲を作り出すことで、日々の悲しみを紛らわしていた」ということでもあります。
マーシーは、そんな背景を知っていたため、ここであえて『ブルース』という言葉を入れたのだと思います。
この歌詞に出てくる『ブルースは加速していく』というのは、「ブルースのミュージシャンの演奏や歌が熱を帯びてくる」という意味だと思います。
皮肉なことではありますが、「ミュージシャンの経験した悲しみが深いほど、音楽も深みを帯びてより良いものになる」場合があります。
ただ、それはある意味、音楽の面白さでもあります。
やはり、音楽は、「自身の悲しみを昇華して、良い曲を作れる」ところが大きな魅力です。
マーシー自身も、ミュージシャンとして、そういった音楽の良さを分かっているはずです。
そのため、この歌詞には、「弱い者がさらに弱いものを叩いている場面を見せられるのは辛いけれど、ミュージシャンとしては、それを音楽として昇華していこう」というマーシーの気持ちが込められているように思えます。
見えない自由がほしくて 見えない銃を撃ちまくる
さらに歌詞を見ていくと、その後も素晴らしいフレーズが出てきます。
見えない自由がほしくて
見えない銃を撃ちまくる
本当の声を聞かせておくれよ
『見えない自由がほしくて 見えない銃を撃ちまくる』というのは、「自由になりたいけれど、どうしたら自由になれるかわからないから、手当たり次第にやれることをやっている」ということでしょう。
「社会」というのは、色々と制約があるため、なかなか自由にふるまえない部分があります。
しかし、人間というのは、それでもなお、自由を求めます。
ただ、「自由になるための方法」を分かって人はあまりいません。
それがわからないとなると、とりあえず「自分が考えた、自由になるための方法」を手あたり次第、試すことになります。
しかし、「今自分がやっている方法が合っているのかわからないまま試す」というのは、なかなかしんどいことです。
頑張って何かを行っても、それが無駄になってしまうこともあるのですから。
ただ、それでもなお、「自由になるために、やれることはなんでもやってやる」という必死さが、この歌詞から伝わってきます。
そして、『本当の声を聞かせておくれよ』というのは、他人に言っているのではなく、「自分自身に問いかけている言葉」ではないかと思います。
自分自身のことであっても、自分自身でつかめていないことは沢山あります。
特に、「自分の本当の気持ち」をつかむことは、非常に難しかったりします。
「自分の本当の気持ち」をはっきりとつかむためには、「自分は、本当は何がしたいんだ?」ということを、自問自答する必要があります。
そのため、『本当の声を聞かせておくれよ』というのは、自分自身に対して、「自分は、本当は何がしたいんだ? 本音を聞かせてくれ」と自問自答しているのではないでしょうか。
自分自身でも「どんな自由が欲しいのかという答え」が出ていないので、自問自答して、それを必死で探しているような感じがします。
ここは天国じゃないんだ かといって地獄でもない
この後の歌詞も、素晴らしいフレーズが出てきます。
ここは天国じゃないんだ かといって地獄でもない
いい奴ばかりじゃないけど 悪い奴ばかりでもない
ロマンチックな星空に あなたを抱きしめていたい
南風に吹かれながら シュールな夢を見ていたい
『ここは天国じゃないんだ かといって地獄でもない いい奴ばかりじゃないけど 悪い奴ばかりでもない』という歌詞は、この世の中のことを、うまく言い表している気がします。
自分たちが住んでいる社会というのは、良いことばかりは起きません。
そういう意味では、「天国」ではありません。
しかし、悪いことばかり起きるのかというと、意外とそうではありません。
確かに悪いことは沢山起きますが、良いことも時々起こります。
そういう意味では、この社会は、「地獄」とも言い切れません。
そして、この社会に住む人々も、いい人ばかりではありませんが、かといって悪い人ばかりということもありません。
この社会には、「良い事と悪い事」「善と悪」がごちゃ混ぜになって存在しています。
多くの人は、「できれば、良い事ばかり起きてほしい」と願っています。
しかし、そう都合よくはいきません。
生きていく中では、「悪い事」が起こっても、それをうまく受け入れて、乗り越えていかなければなりません。
そういったことを考えると、この歌詞には、「人生、良い事ばかりではなく、悪い事が起こる時があるかもしれないけど、悪い事が起こっても、うまく受け入れてやっていこう」というメッセージが込められている気がします。
そして、『ロマンチックな星空に あなたを抱きしめていたい 南風に吹かれながら シュールな夢を見ていたい』という歌詞には、「嫌な事が起こった時は、好きな人と一緒に過ごして気を紛らわそう。そして、今後起こりそうな楽しい事を夢見ながら生きて行こう」というメッセージが込められている感じがします。
サビの歌詞
次に、サビの歌詞も見ていきます。
TRAIN-TRAIN 走って行け
TRAIN-TRAIN どこまでも
TRAIN-TRAIN 走って行け
TRAIN-TRAIN どこまでも
このサビの歌詞では「列車(トレイン)よ、どこまでも走れ」と言っています。
ただ、この部分は、そのままの意味で受け取ってよいものでしょうか?
何か、言葉の裏に、別の意味が隠されている感じもします。
ただ、ここではまだ答えは出さず、記事の「まとめ」のところで、「トレイン」の意味について考えてみたいと思います。
あなたが生きている今日は どんなに素晴らしいだろう
この後にも、素晴らしい歌詞が続きます。
世界中にさだめられた どんな記念日なんかより
あなたが生きている今日は どんなにすばらしいだろう
世界中に建てられてる どんな記念碑なんかより
あなたが生きている今日は どんなに意味があるだろう
マーシーは、常に「過去よりも今」ということを強調していますが、この歌詞にも、そういったポリシーがはっきりと表れています。
世界中で、様々な「記念日」が定められていますが、記念日というのは、あくまで、「過去の出来事」です。
そのため、ここでは、「過去に起こったことを記念する日より、今の方が素晴らしい」と言っています。
そして、記念碑も、あくまで「過去に起こったことを記念して建てられているもの」です。
ここでは、「過去に起こったことを称える記念碑より、今の方が、意味がある」とはっきり言っています。
人間は、どうしても、過去にとらわれがちな生き物です。
しかし、過去にとらわれていると、「今、目の前にある楽しいこと」にも気づけなくなったりします。
それは、非常にもったいないことです。
やはり、「人生を活き活きと過ごす」ためには、過去を重視せず、「今」を重視することが大切です。
この歌詞を見ると、改めてそういったことに気づかされます。
聖者になんてなれないよ だけど生きている方がいい
曲の後半部分にも素晴らしい歌詞が出てくるので、それも見ていきましょう。
栄光に向かって走る あの列車に乗って行こう
はだしのままで飛び出して あの列車に乗って行こう
土砂降りの痛みのなかを 傘もささず走って行く
いやらしさも汚らしさも むきだしにして走ってく
聖者になんてなれないよ だけど生きてる方がいい
だから僕は歌うんだよ 精一杯でかい声で
『土砂降りの痛みのなかを 傘もささず走って行く』というのは、「人生の中で厳しい状況に置かれた時」のことを言っているのだと思います。
そんな時は、立ち止まって、走るのをやめたくなることもあるでしょう。
しかし、ここでは、「そんな時は、いやらしさも汚らしさも、むきだしにしていいから、立ち止まらずに走って行け」と言っています。
これは、「辛い時でも、止まらず、自分のやりたいことをやっていけ」ということだと思います。
そして、『聖者になんてなれないよ だけど生きてる方がいい』というのは、「自分の中の嫌な部分や汚い部分が見えても、それを受け入れて生きていけ」ということでしょう。
確かに、世の中では、多くの人が、「聖者のように、誰に対しても善良に生きたい」と思っています。
世の中には、例外的に、そういう生き方ができる人もいます。
しかし、ほとんどの人は、そういう生き方を目指しても、実際にはできません。
「誰に対しても善良でいる生き方」を目指しても、自分の中の嫌らしい部分や汚い部分が出てきて、それを捨てることができません。
その事実に直面すると、自分に対して失望して、生きる気力が失われてしまう時もあります。
しかし、ここでは、「自分の中の嫌らしい部分や汚い部分が見えても、生きる気力を持って、しぶとく生きていこう」と言っています。
そして、その後には、『だから僕は歌うんだよ 精一杯でかい声で』という歌詞が出てきます。
これは、マーシー自身がミュージシャンなので、こういう歌詞になったのだと思います。
ミュージシャンがやりたいことは、「演奏することや歌うこと」です。
そして、実際に「演奏することや歌うこと」ができます。
だから、マーシーは、ここで「自分はミュージシャンだから、精一杯でかい声で歌うよ」と宣言しているような感じがします。
そして、リスナーに対しても、「自分は精一杯歌っていくから、君たちも、自分のやりたいことを精一杯やっていけ」と言っているような気がします。
まとめ
ブルーハーツ「トレイン・トレイン」の歌詞の考察を行ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
この曲の歌詞を見ていくと、「この曲のサビの歌詞に出てくるトレインとは、何のことを指しているのか?」という疑問も湧いてくるでしょう。
自分としては、この歌詞に出てくる「トレイン」というのは「人生」のことではないかと思います。
「トレイン」の意味については、様々な解釈があると思いますが、「人生」と解釈すると、色々とつじつまが合う感じがします。
「トレイン」を「人生」と解釈すると、この曲には、「人生、悲しい事や嫌な事も沢山あるけれど、それでも、自分の信じた道をまっすぐ進め」というメッセージが込められていることがわかります。
シンプルではありますが、非常に深いメッセージです。
人生の中では、「土砂降りの痛みのなかを 傘もささず走っていかなければならない」ような瞬間もあります。
しかし、この曲の歌詞では、「そういう辛い時ほど、自分のやりたいことを貫け」と言っています。
そういう意味では、辛い時に聴くと、とても勇気づけられる曲です。
この記事を見て、この曲が気になった方は、歌詞に注意しながら、改めて聴き直してみてください。
そうすると、新たな発見があって、非常に面白いと思います。
使われている言葉はシンプルですが、シンプルな言葉の中に、とても重みのあるメッセージが入っています。
また、ベストアルバムにも収録されています。