スピッツ「愛のことば」の歌詞の考察を行います。
この曲は、1995年にリリースされたアルバム「ハチミツ」に収録されています。
シングル曲ではないので、そこまで有名な曲ではないですが、スピッツファンの中では人気がある曲です。
この曲は、タイトルからもわかるように、ラブソングです。
しかし、ただのラブソングではありません。
この曲は、おそらく、「戦場」が舞台になっています。
パッと聴いただけでは、戦場が舞台になっていることに気づかないと思います。
しかし、歌詞をよくよく見てみると、「おそらく、舞台は戦場だろう」ということがわかってきます。
そこで、ここからは、この曲の歌詞について、深く考察していきます。
この曲の作詞・作曲者は草野マサムネです。
歌詞の全文は、下記のサイトで見られます。
1番のAメロの歌詞
この曲は、こんな歌詞から始まります。
限りある未来を 搾り取る日々から
抜け出そうと誘った 君の目に映る海
くだらない話で 安らげる僕らは
その愚かさこそが 何よりも宝物
『限りある未来を 搾り取る日々』という表現を見ると、「この曲の主人公は、今現在、厳しい状況に置かれている」ということがわかります。
そして、その状況から抜け出そうとしているようです。
また、『くだらない話で 安らげる僕らは その愚かさこそが 何よりも宝物』という歌詞を見ると、「今現在、冗談も言えないくらい、切羽詰まった状況にある」ことがわかります。
1番のBメロとサビの歌詞
そして、こんな歌詞が続きます。
昔あった国の映画で 一度観たような道を行く
なまぬるい風に吹かれて
今 煙の中で 溶け合いながら
探しつづける 愛のことば
傷つくことも なめあうことも
包みこまれる愛のことば
『昔あった国の映画』とありますが、それがどんな映画なのかは、よくわかりません。
しかし、この主人公は、その映画で観たような道を進んでいるようです。
そして、注目すべき点は、『煙の中で』という歌詞です。
「厳しい状況に置かれている」「煙の中にいる」ということをふまえると、「もしかして、戦場にいるのかな?」と推測することができます。
ただ、ここまででは、まだ「戦場だ」と言い切ることはできません。
しかし、戦場なのかはっきりしませんが、厳しい状況にいることは確かです。
そして、この主人公は、一緒にいる相手と、愛を確かめ合っています。
ここに出てくる『傷つく』というのは、精神的に傷ついているのかもしれませんが、もしかすると、精神だけでなく、肉体も傷ついているのかもしれません。
2番のAメロの歌詞
2番は、こんな歌詞から始まります。
優しい空の色 いつも通り彼らの
青い血に染まった なんとなく薄い空
ここで注目するべきなのは、『青い血』という歌詞です。
「血」という単語が出てくることで、より、「戦場」の雰囲気が醸し出されています。
ただ、「赤い血」ではなく『青い血』という歌詞になっている点は、興味深いです。
これは、草野さんならではの独特な表現です。
おそらく、「無慈悲に血が流れる」という意味で、『青い血』となっているのではないかと思います。
「戦場の冷酷さ」を『青』という色で表現しているような気がします。
2番のBメロとサビの歌詞
さらに、こんな歌詞が続きます
焦げくさい街の光が ペットボトルで砕け散る
違う命が揺れている
今 煙の中で 溶け合いながら
探しつづける 愛のことば
もうこれ以上 進めなくても
探しつづける 愛のことば
この部分の歌詞を見ると、「やはり舞台は戦場だった」と確信を持つことができます。
『焦げくさい街の光』というのは、「爆撃で街が焼かれて、光っている」といことだと思います。
また、『違う命が揺れている』というのは、「色んな人が、生きるか死ぬかの狭間で揺れている」ということだと思います。
そして、『ペットボトルで砕け散る』というのは、おそらく、「ペットボトルが破裂するように、爆弾が破裂する」という意味でしょう。
『もうこれ以上 進めなくても』というのは、「空襲や爆撃から逃げてきたけれど、もう逃げる体力もなくなってきている」ということだと思います。
ただ、この主人公は、そんな極限の状況でも、隣にいる相手にかける「愛のことば」を探しています。
「戦場で追い詰められていて、この状況で信じられるのは愛だけ」ということでしょうか。
なんだか、戦争映画のワンシーンのような歌詞です。
Cメロの歌詞
Cメロでは、こんな歌詞がきます。
雲間からこぼれ落ちてく 神様達が見える
心の糸が切れるほど 強く抱きしめたなら
『雲間からこぼれ落ちてく 神様達が見える』というのは、「追い詰められて、神様も頼りにできない」ということでしょうか。
そして、『心の糸が切れるほど 強く抱きしめたなら』というのは、「好きな人と抱き合うこと、不安な気持ちを紛らわしている」ということだと思います。
色々と想像すると、胸が痛くなる歌詞ですね。
なんだか、この歌詞をじっくり見ていると、「この曲の主人公と、その相手は、なんとか助かってくれ」と言いたくなります。
まとめ
スピッツの「ハチミツ」の歌詞の考察を行ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
この曲の歌詞は、様々な解釈ができます。
しかし、歌詞をじっくり見ていくと、「この曲は、戦場のラブソングである」と解釈するのが自然なのではないかと思います。
少なくとも、自分はそう考えています。
この曲の歌詞には、「戦争反対」「戦争をやめよう」といったストレートな反戦の言葉は入っていません。
そのため、「この曲は反戦歌である」とは言い切れません。
ただ、自分としては、歌詞の中で、「戦争の悲惨な状況」を描写することで、「こんな酷いことはやめよう」という草野さんなりのメッセージが込められているように思えます。
意見は分かれるとは思いますが、自分としては、「この曲は、反戦歌である」と解釈しています。
この曲を聴くと、改めて、「罪のない人が沢山亡くなる戦争はやめてほしい」と思ったりします。