ブルーハーツの「ハンマー」の歌詞の考察を行います。
「ハンマー」は、1987年にリリースされた曲です。
この曲は、「人にやさしく」のカップリング曲としてリリースされました。
カップリング曲ではありますが、シングル曲にも負けない名曲だと思います。
根強い人気のある曲で、ベストアルバムにも収録されていたりします。
この曲の歌詞は、非常にメッセージ性が強く、その魅力は、月日が経っても色あせません。
そこで今回は、「ハンマー」の歌詞について、深く考察していきます。
作詞・作曲は、真島昌利(マーシー)です。
歌詞の全文は、下記のサイトで見られます。
冒頭は、サビから始まる
曲の冒頭は、まずサビから始まります。
ハンマーが振り下ろされる
僕達の頭の上に
ハンマーが振り下ろされる
世界中いたるところで
ここで言う、「ハンマー」の意味は、まだよくわかりません。
しかし、曲を聴き進めるうちに、段々と、「ハンマー」の意味がわかってきます。
「安っぽいメッキ」「カラッポの言葉」
次に、こんな歌詞が続きます。
安っぽいメッキなら すぐにはがれてしまう
カラッポの言葉なら もう僕は聞き飽きた
ここに出てくる『安っぽいメッキ』『カラッポの言葉』の意味については、様々な解釈があると思います。
ただ、自分としては、『安っぽいメッキ』というのは、「権力者が、身なりを取り繕っていること」の例えだと解釈しました。
権力者というのは、高級なスーツを着たり、高価な腕時計を着けたりすることで、「自分を良く見せよう」とします。
しかし、高級なスーツを着ていても、実際には、非道なことばかりやっている権力者が沢山います。
そういった、「中身はどす黒いが、身なりは取り繕っている権力者」のことを、『安っぽいメッキ』と表現しているのだと思います。
権力者に対して、「高級なスーツに身を包んで隠そうとしても、そのどす黒い中身はちゃんと見えているよ」と言いたいのでしょう。
また、『カラッポの言葉』というのは、「権力者が掲げる、嘘くさい大義」のことでしょう。
権力者は、しばしば、「正義のため」と言って戦争を仕掛けたりします。
しかし、口でそう言っても、実際は、「相手国の領土を奪いたい」とか「相手国の資源が欲しい」という理由で戦争を仕掛けていたりします。
ただ、そういった理由をはっきり言ってしまうと、国内外から反発が大きくなります。
そういった反発を避けるために、「正義のため」という、もっともらしい言葉を使ったりします。
権力者がよく用いる「本心とは別の、表向きの言葉」のことを、ここでは『カラッポの言葉』と表現しているのだと思います。
権力者は、そういうことばかり言っているため、『もう僕は聞き飽きた』と言っているのです。
何もみえなくなっちゃうよ
さらに、こんな歌詞が続きます。
悲しみが多すぎて 泣いてばかりいたって
何もみえなくなっちゃうよ
この部分は、この曲全体のキーとなるような歌詞だと思います。
新聞やネットニュースを見ると、毎日、悲しいニュースが沢山載っています。
「戦争が起こった」「殺人事件が起こった」「強盗事件が起こった」「政治家の汚職が判明した」といった記事です。
こういった悲しい記事を見ると、当然、悲しい気分になって、泣いてしまうこともあるでしょう。
しかし、この歌詞では、「悲しいニュースを見て、泣いているだけになってしまったら危険だ」と警鐘を鳴らしています。
例えば、「戦争のニュース」は非常に悲しいものです。
罪もない人が戦争によって殺されているというニュースを見ると、泣いてしまうこともあるでしょう。
しかし、戦争のニュースを見て、ただ泣いている人ばかりになったら、戦争はいつまで経っても終わりません。
人は、どうしても悲しみの感情に支配されると、物事の本質が見えなくなったりします。
そういったことを、この歌詞では指摘しています。
この歌詞を聴くと、「悲しい時ほど、物事の本質を見るように心がけよう」と思わされます。
戦争は、何も理由がなく始まるものではありません。
戦争が起こった理由を探っていくと、権力者のエゴにより戦争が引き起こされているケースが多かったりします。
そこで、一歩引いて、冷静に物事を見ると、そういった構造が見えてきます。
そして、その構造にみんなが気づいて、その権力者をみんなで批判すれば、権力者の地位から引きずりおろすことができるかもしれません。
しかし、悲しみに暮れて、泣いているだけだと、権力者の地位は安泰となってしまいます。
悲しいニュースを見て、ただ泣いているだけでは、その状況は変わりません。
泣いた後、何かしらの行動を起こすことが重要です。
この歌詞は、そんなことを教えてくれます。
48億の個人的な憂鬱
歌詞の続きを見ていきましょう
48億の個人的な憂鬱
地球がその重みに 耐えかねてきしんでる
「48億」というのは、1985年当時の全世界の人口です。
この歌詞は、「全世界の人が、権力者によって抑圧されて、憂鬱な気持ちを抱えている」と言いたいのだと思います。
ちなみに、2021年時点での世界人口は78億人と言われています。
1985年から比べると、30億人も増えたことになります。
それを考えると、2022年現在、その「重み」は、さらに増していると言えます。
何も聞こえなくなっちゃうよ
次は、またこの曲のキーとなるようなフレーズが出てきます。
でたらめばかりだって 耳をふさいでいたら
何も聞こえなくなっちゃうよ
テレビでニュース番組を見ると、毎日のように、「ふざけるな」と呆れてしまうような酷いニュースが飛び込んできます。
そんなニュースばかりだと、「こんなバカバカしいことは聞きたくない」と思って、テレビを消したくなります。
しかし、でたらめなニュースばかりだからといって、全くニュースを聞かなくなるのは危険です。
例えば、テレビのニュースで、「まるでコント番組のような、政治家の酷い汚職事件」がやっていたとします。
そういうニュースを聞くと、呆れてテレビを消したくなります。
しかし、酷いニュースだからといって、みんながそのニュースを見なくなると、政治家の汚職について批判する人がいなくなります。
そうなると、政治家が「汚職をしても、大して批判されないぞ」と思い、なかなか汚職がなくなりません。
そういう政治家ばかりになると、庶民の利益となるような政策を行わなくなるので、庶民の生活は余計に苦しくなったりします。
そのため、呆れるようなニュースでも、しっかりと聞いて、それに対して、何らかの行動を起こす必要があります。
そのニュースを聞いた人が、政治家の汚職を批判して、「この政治家の所属政党には投票しない」と主張すれば、政治家は焦ります。
それにより、汚職が減ることもあります。
この歌詞を聴くと、「酷いニュースばかりだったとしても、しっかり聞いて、それに対して何らかの行動をおこさなきゃ」と改めて気づかされます。
「ハンマー」の意味とは
ここでまた、サビが来ます。
ハンマーが振り下ろされる
僕達の頭の上に
ハンマーが振り下ろされる
世界中いたるところで
ここで再びサビの歌詞を聴くと、「ハンマー」の意味がなんとなくわかってきます。
この歌詞にある「ハンマー」というのは、「権力による大きな力」という意味だと思います。
権力による大きな力のことを「ハンマー」に例えているのです。
権力者は、「大きな力」によって、民衆を抑えつけてこようとします。
「法律」によって抑えつけることもあれば、「警察」を使って抑えつけることもあります。
また、「メディア」を使って、抑えつける場合もあります。
そして、最悪なのは、「軍隊」を使って武力で抑ええつけることです。
軍隊を使うと、死者が沢山出ますが、それでも構わず、民衆を抑えつけようとする権力者は沢山います。
もちろん、権力者が「大きな力」抑えつけようとすると、反発する民衆もいます。
しかし、「権力による力」は非常に大きいので、為す術なく抑えつけられてしまうことが多くなっています。
このサビの歌詞は、「権力者の力は非常に大きいけれど、それを常に監視しなければならない」というメッセージが込められているように思います。
僕は部屋で一人ぼっち
最後は、こんな歌詞で終わります。
外は春の雨が降って 僕は部屋で一人ぼっち
夏を告げる雨が降って 僕は部屋で一人ぼっち
この部分は、なんとも切ない気分になる歌詞です。
「権力者に抑えつけられて、どうしようもなく、部屋で、一人で泣いている姿」が目に浮かびます。
非常に切ないですが、どこか詩的な美しさもあります。
こういった言葉の選び方は、「さすがマーシーだな」と感じてしまいます。
まとめ
ブルーハーツ「ハンマー」の歌詞の考察を行ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
この歌詞は、「権力者による大きな力」がテーマになっています。
曲全体に、「権力に飲み込まれてしまう無力さ」が漂っています。
この曲は1987年にリリースされた曲ですが、2022年現在でも、「権力者による大きな力」によって、多くの人が苦しめられています。
それを考えると、「こんなに時間が経っても、なかなか変わらないのか」という無力さが襲ってきます。
しかし、その一方で、この歌詞には、「権力者をしっかりと監視しなければならない」というメッセージも込められています。
これは、非常に大切なことです。
この曲を聴くと、「権力者をしっかり監視して、おかしなことをしていたら批判していかなければならない」と、改めて気づかされます。
この記事を読んだ方は、そんなことを考えながら、改めて「ハンマー」を聴き直してみてください。