ブルーハーツ「少年の詩」の歌詞の考察を行います。
こちらは、甲本ヒロトがブルーハーツを組む前に作った曲です。
彼が、「ザ・コーツ」というバンドをやっていた時に作られた曲のようです。
今では、ブルーハーツの初期の名曲として、多くの人に愛されている曲です。
オリジナルアルバムでは、「THE BLUE HEARTS」に収録されています。
また、ベストアルバムにも収録されています。
この曲は「少年の詩」というタイトルなので、「10代向けの曲」と思われがちです。
確かに、歌詞は、10代の少年の目線で書かれています。
しかし、「10代向けの曲」という言葉で簡単にくくれるような曲ではありません。
歌詞をよく見てみると、深いメッセージが込められていて、大人にも十分響く内容となっています。
そこで今回は、この曲の歌詞について、深く考察していきます。
この曲の作詞・作曲者は甲本ヒロトです。
歌詞の全文は、下記のサイトで見られます。
https://j-lyric.net/artist/a00734c/l006581.html
- 朝の日常風景の描写
- 今の生活に対する、漠然とした不満
- 「このままじゃいけない」という思い
- サビの部分の歌詞①
- 恋愛についての悩み
- 「先生などの大人」に対する不信感を示す歌詞
- 「大人たちにほめられるようなバカにはなりたくない」
- サビの部分の歌詞②
- 「少年の声は風に消されても 間違っちゃいない」
- サビの部分の歌詞③
- 「色んな事が 思い通りになったらいいのになあ」
- 「少年の詩」の歌詞は、大人にも十分響く内容
- まとめ
朝の日常風景の描写
この曲は、日常風景の描写から始まります。
パパ ママ お早ようございます
今日は何から始めよう
テーブルの上の ミルクこぼしたら
ママの声が聞こえてくるかな
この部分の歌詞は、「よくある家庭の日常風景」といった感じです。
多くの10代の少年と同じように、この主人公の少年も、両親と一緒に暮らしていることがわかります。
今の生活に対する、漠然とした不満
次に、少年の持つ「漠然とした不満」を描写した歌詞が出てきます。
1.2.3.4 5つ数えて バスケットシューズが履けたよ
ドアを開けても 何も見つからない
そこから遠くを ながめてるだけじゃ
この歌詞を見ると、少年は、「漠然とした不満」を持っていることがわかります。
「今の生活がどうしても嫌という訳ではないが、何かしっくりこない」という感じでしょうか。
「このままじゃいけない」という思い
次にまた、意味深な歌詞が出てきます。
別にグレてる訳じゃないんだ
ただこのままじゃいけないってことに
気づいただけさ
『別にグレてる訳じゃないんだ』という歌詞から、この少年は、優等生ではないということがわかります。
この歌詞からは、「大人が推奨していないこともやっている」ということが示唆されています。
でも、そのことについて、少年は「グレている訳ではない」と言っています。
「このままじゃいけないことに気づいたから、そういうことをやっている」と説明しています。
サビの部分の歌詞①
そして、サビの部分には、インパクトのある歌詞が来ます。
そしてナイフを持って立ってた
そしてナイフを持って立ってた
そしてナイフを持って立ってた
このサビの歌詞を聴くと、「ナイフを振り回している非行少年」のイメージがパッと浮かびます。
しかし、もう少し曲を聴き進めていくと、そんな単純なものではないということに気づきます。
恋愛についての悩み
次に、「恋愛について悩み」に関する歌詞が出てきます。
僕やっぱり ゆうきが足りない
「I LOVE YOU」が言えない
言葉はいつでも クソッタレだけど
僕だってちゃんと考えてるんだ
多くの少年が抱えている恋愛の悩みを、この少年も抱えているということがわかります。
この歌詞から、「好きな子がいるけれど、勇気がなくて告白できていない」ということがわかります。
ここの歌詞で特に重要なのは、『ゆうきが足りない』という部分だと思います。
「先生などの大人」に対する不信感を示す歌詞
次に、「先生などの大人」に対する不信感を示している歌詞が出てきます。
どうにもならない事なんて どうにでもなっていい事
先生たちは僕を 不安にするけど
それほど大切な言葉はなかった
学校の先生というのは、「今、しっかり勉強をやっておかないと、将来、大変なことになるぞ」といった感じで、生徒に脅しをかけてきたりします。
そう言っておいた方が、生徒が将来のことを不安視して、勉強をやるようになったりするからです。
それが、この歌詞で言う、『先生たちは僕を 不安にするけど』といった部分です。
ただ、この少年は、先生たちの言葉は「生徒の将来を本気で心配してそう言っている訳ではない」ということを見抜いています。
先生たちは、本気で生徒の将来を心配しているのではなく、「とりあえず今、生徒に勉強させるため」に、将来の不安を持ち出して、脅していることに気づいています。
そんな先生たちの言葉は胸に響かないので、『それほど大切な言葉はなかった』という感想になる訳です。
また、先生たちは、「今、勉強しておかないと、将来どうにもならなくなるぞ」と脅してきたりしますが、この少年は、「どうにもならなくなると脅してくるけど、それって実は、どうにでもなっていい事じゃないの」ということに気づきます。
確かに、学生のうちにしっかり勉強しておかないと、「良い学校を出て、大企業に就職して、高収入を得る」というルートには乗れません。
しかし、そのルートに乗れなかったとしても、人生が終わる訳ではありません。
そのルートに乗れなくても、楽しい人生を送れている人は沢山います。
この少年は、そのことを感覚的に理解しています。
だからこそ、「先生たちが『将来、どうにもならなくなるぞ』と言ってくるけれど、それって実は、『どうにでもなっていい事』だよな」と気づいているのです。
この部分は、今、教員をしている大人にも、凄くためになる歌詞だと思います。
生徒の多くは、「本当に自分のことを心配して言ってくれる先生」と「とりあえず勉強させたいから言ってくる先生」との違いをすぐ見抜きます。
先生の言葉の選び方や言い方で、「あ、この先生は、本当に自分の将来を心配して言ってくれている」とか「この先生は、とりあえず勉強させたいだけだな」ということを瞬時に見抜きます。
そのため、生徒に対して、「将来のために、今、本気で勉強してほしい」と思っているなら、「先生は、本気であなたの将来を心配して言っているんだよ」という気持ちをしっかり言葉に乗せなければなりません。
そうでなければ、生徒が「本気で勉強しよう」という気にはなりません。
「生徒のリアルな感情を歌詞にしている」という意味でも、この歌詞は凄く価値があると思います。
そういう意味では、学校教育にも活かすことができる歌詞だと思います。
そして、話は変わりますが、個人的に、『どうにもならない事なんて どうにでもなっていい事』という歌詞を初めて聴いた時は、ハッとさせられる部分がありました。
これを聴いて、「確かにそうかもしれない」と思いました。
この歌詞は、「今、これをやらなければ」とがんじがらめになっている人の心を、少しほぐしてくれます。
世の中には「やらなければいけないとされていること」が沢山あります。
しかし、よくよく考えてみると、「本当にやらなければいけないこと」というのは、それほど沢山ある訳ではありません。
一つが二つ、「やらなければならないとされていること」をやらなかった程度ならば、生活にあまり大した影響はなかったりします。
この歌詞を聴くと、そんなことに気づけて、心に少し余裕ができます。
「大人たちにほめられるようなバカにはなりたくない」
そしてまた、衝撃的な歌詞が出てきます。
誰の事も 恨んじゃいないよ
ただ 大人たちにほめられるようなバカにはなりたくない
こういう歌詞を聴くと、「分別のつかない少年が大人に反抗している」と捉える人がいます。
そういう人は、「大人に比べて、少年の方が未熟で劣っているんだ」と考えたりします。
しかし、この歌詞は、それほど単純なものではないと思います。
歌詞をじっくり見てみると、この少年は「全ての大人に反抗しようとしている」訳ではないと思います。
「上辺だけの薄っぺらい言葉」を言う大人に対して反抗しているのです。
そして、少年の周りにはそういう大人ばかりなので、大人に対してうんざりしているのです。
この歌詞には、歌詞には書かれていない隠された意味が含まれていると思います。
歌詞では『大人たちにほめられるようなバカにはなりたくない』となっていますが、少年の心の中では、『上辺だけの言葉ばかり言っている大人にほめられるようなバカにはなりたくない』と思っているはずです。
歌詞をじっくり見ていくと、そういうニュアンスが含まれていることがわかります。
サビの部分の歌詞②
ここでまた、サビの歌詞が出てきます。
そしてナイフを持って立ってた
そしてナイフを持って立ってた
そしてナイフを持って立ってた
ナイフを持って立ってた
ここまで歌詞を聴いてから『ナイフを持って立ってた』というフレーズを聴くと、「あれ、もしかして、ただイライラしてナイフを振り回しているという訳ではないのかな?」という気分になります。
ただ、まだこの時点では、『ナイフ』の意味は、はっきりわからなかったりします。
「少年の声は風に消されても 間違っちゃいない」
サビの部分が終わり、また違ったフレーズが出てきます。
少年の声は風に消されても 間違っちゃいない
「少年の声」というのは、「上辺だけの言葉を言う大人に対して批判する」ということだと思います。
しかし、そういう批判の声というのは、「未熟な10代の少年が言っていることだから」と思われて、大人はまともに取り合おうとしなかったりします。
それが、「風に消される」という意味だと思います。
しかし、この歌詞では、その少年の主張が大人によって消されてしまったとしても、「彼の主張は間違っていない」と言っています。
サビの部分の歌詞③
ここでまた、サビの歌詞が出てきます
そしてナイフを持って立ってた
そしてナイフを持って立ってた
そしてナイフを持って立ってた
ここで「ナイフ」という言葉を連呼されると、「あれ、このナイフという言葉には、何か別の意味が含まれている」ということがわかってきます。
自分は、この「ナイフ」というのは「勇気」という意味だと解釈しました。
「ナイフ」というのは、何かと戦う時に使うものです。
そして、「勇気」も、何かと戦うためには、絶対に必要なものです。
ここで歌われる『ナイフを持って立ってた』という歌詞は、単にナイフを持って立っているという意味ではありません。
この言葉の裏には、「勇気を持って立ち上がる」という意味も含まれています。
「色んな事が 思い通りになったらいいのになあ」
そしてこの曲は、こんな言葉で締めくくられます。
これも、非常に印象深い言葉です。
そして! 色んなことが思い通りになったらいいのになあ
この言葉の中には、色んな意味が含まれています。
この少年は、「勇気を持って戦う」と決意しました。
その戦う相手というのは、「上辺だけの言葉を言う先生」や、「居心地の悪い世界」です。
しかし、それらは、なかなか手強い相手です。
負ける確率が高く、勝ち目の薄い戦いとも言えます。
少年は、それでもなお、戦うことを決めました。
しかし、頭の中にはどうしても、「戦っても、思い通りに勝つのは難しいだろうな」という思いがあります。
ここで歌われる『色んなことが思い通りになったらいいのになあ』という歌詞には、「自分の思い通りにならないことはわかっているけど、でもどこかで奇跡が起きて、思い通りになったりしないかなあ」という意味が込められています。
そういったことを考えながらこの歌詞を聴くと、少し切なくなったりします。
しかし、負ける確率が高いとわかっていながら、戦うことを決めた少年に対して、「大変だと思うが、頑張れよ」とエールを送りたくもなります。
「少年の詩」の歌詞は、大人にも十分響く内容
ここまで、「少年の詩」の歌詞を詳しく見てきました。
この曲は、確かに、少年の目線で書かれた歌詞なので、少年に響く内容となっています。
しかし、「この歌詞に込められた本質」の部分に目を向けると、「子供だけでなく、大人にも十分響く内容」であることがわかります。
この歌詞に出てくるような、「上辺だけの言葉を言う先生」を「上辺だけの言葉を言う会社の上司」に置き換えてみましょう。
そして、「大人たちにほめられるようなバカ」を「上辺だけの言葉を言う上司に、ゴマをする社員」に置き換えてみましょう。
そうすると、会社員の人にも、非常に響く内容になります。
会社員になると、「上辺だけの言葉を言う上司」に沢山出会います。
口では「君の将来のことを考えて厳しいことを言っているんだ」と言いながら、明らかに「とりあえず、今、仕事をさせたいだけ」の上司は腐る程います。
そして、「この上司は、上辺だけの言葉を言っているな」とわかっていながらも、社内で出世したいがために、そういう上司にゴマをする社員も腐る程います。
そういう社員は、大した仕事をしていなくても、上司にかわいがられていたりすると、出世して良い給料を貰えたりします。
しっかりと仕事をしている社員がそういうのを見ると、「結局、ゴマすりがうまい人が得をするのか」と思い、空しくなったりするでしょう。
でも、そんな中でも、薄っぺらい上司に媚びず、「良い仕事をすること」に集中している社員もいます。
そういう人は、会社内でなかなか良い思いはできないかもしれませんが、勇気を持って「上司」や「会社」と戦っていると思うので、見ていてかっこいいです。
そんな社員が、この「少年の詩」を聴いて、「自分のやっていることは間違っていないから、頑張ろう」と勇気を貰える場合もあると思います。
また、今現在、「会社員」をしている人だけでなく、「フリーランス」で仕事をしている人や、「ニート」の人にも、刺さる歌詞だと思います。
フリーランスで仕事をしていると、本気でその人の将来を考えている訳ではないのに「フリーランスは不安定だから、大きな会社に勤めた方がいいよ」と言ってくる人がいます。
ただ、そういう上辺だけの言葉は響かないので、その言葉を聞いて「やっぱり大きい会社に就職しよう」と思う人は少ないでしょう。
また、「ニート」をしている人に対して、本気でその人の将来を考えている訳ではないのに「ニートはダメだ、働け」と言ってくる人もいます。
しかし、そういう上辺だけの言葉を聞いて、「よし、働こう」と思うニートの人も少ないはずです。
そもそも、「フリーランス」で働いている人も、「ニート」をしている人も、それを続けることのデメリットは、みんなわかっていると思います。
しかし、デメリットはありますが、「フリーランス」や「ニート」にはメリットもあります。
フリーランスの場合は、「会社に縛られずに自由に働ける」というメリットがあります。
また、「ニート」の場合は、「働いていないので、完全に自分の好きなことができる」というメリットがあります。
しかし、そういうことを深く考えず、「フリーランスはダメ」「ニートはダメ」と説教してくる大人はいます。
そういう人に出会った場合は、「こんな奴の言うことは無視して、自分のやりたいことを貫くぞ」と思ったりするでしょう。
しかし、そういう感じで説教してくる大人は腐る程いるので、それが重なると、自分の意志を貫くことが難しくなったりします。
そんな時に、この「少年の詩」を聴くと、「やっぱり、自分の意志を貫こう」と思えたりします。
そういう意味では、この「少年の詩」は、フリーランスで自分のやりたい仕事をしている人や、今現在ニートで今後やりたいことを模索している人にも、勇気を与えてくれる歌です。
それを考えると、この曲を「10代向けの曲でしょ」と言って切り捨てるのは、非常にもったいないことです。
歌詞の本質を理解すると、大人にも十分響く内容なのですから。
まとめ
ブルーハーツ「少年の詩」の歌詞の考察を行ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
この歌詞には、非常に簡単な言葉しか入っていません。
しかし、歌詞をじっくり考察していくと、簡単な言葉の裏に深い意味が隠されていて、驚かされます。
改めて、作詞家としての甲本ヒロトのスケールの大きさを感じます。
この歌詞は、少年の目線で書かれています。
しかし、歌詞の本質を見ると、大人にも十分響く内容になっています。
成長してどんどん歳を取っていったとしても、社会の中で生きている限りは、この曲はずっと心に響き続けるのかなと思います。
そういう意味では、非常に普遍性を持った曲です。
この曲を聴くと、子供も大人も、「勇気を持って、自分のやりたいように行動することが大切だ」ということに改めて気づかされます。