ポップソングのヒットチャートを見てみると、「ラブソングばっかりだな~」と思うことがあります。
自分も、ラブソング自体は嫌いではないです。
ポップソングの中で、好きなラブソングも沢山あります。
しかし、これだけラブソングがずらっとヒットチャートに並んでいると、ちょっとうんざりします。
そして、「もう少しラブソング以外の曲があってもいいのでは?」と思ったりします。
ただ、そういうことを言うと、「恋愛は人間の本能だから、ラブソングの人気が高いのは当然だ」と言う人もいます。
そう言われると、「確かにそうかも」と納得しそうになります。
しかし、そう思った人は、少し冷静になって考えてみてください。
恋愛というのは、多くの人にとって興味をひく要素ではあります。
ただ、人間の生活というのは、恋愛だけをしている訳ではありません。
そして、恋愛以外にも、人の興味をひくことは沢山あったりします。
それにも関わらず、ヒットチャートがラブソングばかりになるのは、何か別の理由がある気がします。
恋愛というのは、『今ここ』に非常に集中するという特徴があります。
それが、現代社会において、ラブソングの人気が異常に高い大きな理由だと思います。
ラブソングを聴いている人の多くは、ラブソングを聴くことで、『今ここ』の楽しさに浸りたいのでしょう。
そして、ヒットチャートがラブソングだらけなのは、そういう人がそれだけ多いということです。
「恋は盲目」とよく言いますが、恋愛に夢中になっている人は、あまり後先考えません。
「将来の人生設計」よりも、「今、この人が好き」という気持ちで突き進みます。
そういう姿は、はたから見ていると、「もうちょっと冷静に考えなよ」と思ったりします。
しかし、恋愛に夢中になっている本人は、その瞬間が最高に楽しかったりします。
そして、はたから冷静に見ている人も、心の底では「自分も、後先考えず、恋愛に夢中になりたい」と思っていたりします。
恋愛に夢中になっている人を表面的にはバカにしつつも、心の底では、「ちょっとうらやましいな」と思っている場合があります。
なぜ恋愛に夢中になっている人をうらやましく感じるかというと、今の資本主義社会のシステムの中では、『今ここ』に集中する機会が非常に少ないからだと思います。
今の社会では、「過去」と「未来」が非常に重視されます。
まず、「過去」が重視されている例について説明します。
会社に入りたいと思っても、入社の際は過去の「学歴」が重視されていて、学歴のない人は、希望する会社になかなか入れません。
そして、学歴以外にも「過去の実績」が重視されます。
「過去の素晴らしい実績」がある人は、今現在、たいしたことをしていなかったとしても、評価される傾向にあります。
逆に、今現在凄いことをしている人でも、過去の実績がないと、社会ではなかなか評価されません。
次に、「未来」が重視されている例について説明します。
学校に入ると、「将来に備えて、努力しなさい」と周りから言われます。
そして、勉強をせずに遊んでばかりの生徒がいると、「遊んでばかりだと、将来、痛い目を見るぞ」と批判されます。
逆に、今の楽しみを犠牲にして、学校の勉強に集中している生徒は、「偉い」とほめられます。
この傾向は、学校を出て、社会人になっても変わりません。
今の楽しみばかりを重視している社員がいると、上司に叱られます。
逆に、今の楽しみを捨てて資格の勉強をしていたりすると、「偉い」とほめられます。
こういった例を見ると、現代社会というのは、明らかに、「今」よりも「過去」や「未来」のを重視していると言えます。
そういう意味では、現代社会というのは『今ここ』に集中する機会が非常に少ないと言えます。
例えば、学生の場合は、友達と遊んでいても、「来週テストだから勉強しなきゃ」という思いが浮かんだりして、目の前にいる友達に集中できないことがあります。
社会人の場合は、高級なレストランにディナーを食べに行っても、「明日は苦手なプレゼンがある。嫌だな」という気持ちが浮かぶと、ディナーに集中できないことがあります。
この例で挙げた通りでなくとも、これと似たようなことは、誰しもが経験していると思います。
それを考えると、現代社会においては、「今ここにある楽しさに集中すること」はなかなか難しかったりします。
「今、目の前にある楽しさに集中したい」と思っても、「過去」や「未来」が邪魔をしてきて、なかなか集中できないのです。
そんな現代社会において、「恋愛」というのは、「今ここの楽しさに集中する」という意味では、かなりパワーのあるものです。
恋愛というのは、「今、この人が好き」とときめいている瞬間が一番楽しかったりします。
そして、恋愛以外の楽しみでは「過去や未来を重視しよう」と思う人でも、恋愛に関することだけは、過去や未来を捨てて「今ここ」の楽しみに没頭しようとしたりします。
勉強時間を削って彼女とデートしている学生や、翌日大事な仕事があっても彼女と夜遅くまで過ごしている会社員は山ほどいます。
普段は「今」を軽視して「過去」や「未来」を重視している人でも、恋愛が絡むと、急に「今」が最優先になってしまう人はいくらでもいます。
このように、「過去や未来」が非常に重視される現代社会でも、「恋愛」が絡むと、過去や未来を押しのけて、強制的に「今ここ」の楽しさに没頭させてしまうパワーがあります。
そういうパワーがあるため、ポップソングの中では、ラブソングが異常な人気を博しているのだと思います。
ハッピーなラブソングというのは、今現在楽しい恋愛をしている人が聴くと、その恋愛の楽しさが倍増します。
また、今現在、恋愛をしてない人が聴いても、「いつか、『何もかも捨ててもいい』と思えるような恋人ができたらいいな」と思いながら聴けたりします。
そういう意味では、ラブソングというのは、恋愛している人に対しても、していない人に対しても「今ここ」の楽しさに無理やり引き込むパワーがあります。
それを考えると、ラブソングが人気なのも分かります。
ただ、そういうことを踏まえても、「ヒットチャートのほとんどがラブソング」というのはちょっと異様な感じがします。
これはある意味、現代社会において、「恋愛以外のシーンで、『今ここ』を楽しんでいる人が非常に少ない」ということを端的に表しています。
恋愛は確かに素晴らしいものですが、恋愛をしている時以外は『今ここ』を楽しめていない人ばかりだとしたら、それはそれでなんだか寂しい感じがします。
そして、そういう人ばかりの社会は、なんだか不自然な気もします。
ラブソングばかりのヒットチャートに違和感を覚えたら、あえて、「ラブソング以外の曲」を集中して聴いてみることをおすすめします。
ポップソングには、ラブソング以外にも、様々なことをテーマにした曲があります。
「生き方をテーマにした曲」、「仕事をテーマにした曲」、「自然を描写した曲」、「政治的な曲」、「何気ない日常をテーマにした曲」など、様々です。
そういう曲を聴いてみて、「あ、面白い」と思って集中して聴いていて楽しめるようになると、ラブソング以外でも『今ここ』を楽しめるようになります。
そういう感じで、音楽をきっかけに興味の幅を広げて、恋愛以外でも『今ここ』を素直に楽しめるようになると、人生はより面白くなってくるはずです。
恋愛は『今ここ』を楽しめるものですが、「恋愛でしか『今ここ』を楽しめない」のだとしたら、それはちょっと異常な状態です。
しかし、今の資本主義社会では、その異常な状態が普通の状態になっていたりします。
その異常性に気づいたら、意識的に恋愛以外の楽しみも見つけて、もう少し自然な状態にシフトチェンジしていきましょう。