しょうの雑記ブログ

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甲本ヒロトとマーシーの「楽しむことを最優先する」という考え方

 自分は、音楽が好きなので、色々なジャンルの音楽を聴きます。

 

 その中で、「パンク」というジャンルにカテゴライズされてる音楽も聴きます。

 

 しかし、「パンク」を聴いていると、「一体、パンクってなんだろうな?」と疑問に思うこともあります。

 

 一般的に「パンク」というと、「ロックの一種で、テンポが速くて、激しい音楽」というイメージだと思います。

 

 しかし、「テンポが速く激しい音楽」をやっているバンドでも、「これはパンクだ」と感じる時もあれば、「これは、全然パンクじゃない」と感じる時もあります。

 

 音だけ聴けば似ているのに、あるバンドは「パンク」と感じて、別のバンドは「パンクじゃない」と感じるのは不思議です。

 

 そう考えると、「パンク」というのは、単に音楽のことだけを指しているのではないと思います。

 

 

 

 

 元々、パンクは「反体制的な音楽」として世に出てきました。

 

 当時の政府に不満を持っている若者が、楽器を持ち、激しい音楽を奏でて、政府を批判しました。

 

 それに、当時の若者達も反応しました。

 

 体制批判というのは、なかなか痛快ですから、当時の政府に不満を持っている若者がパンクロックを聴くようになりました。

 

 しかし、時代が進むにつれ、徐々に政治的な色合いは薄れていきます。

 

 パンクロックがブームになると、歌に政治的なメッセージを込めず、「パンクロックの音」だけを真似するバンドも沢山出てきます。

 

 そうなると、政治的なメッセージを歌っていなくても、「テンポが速く激しい音楽」をやっているバンドならば、「パンク」とカテゴライズされるようになりました。

 

 パンクロックには、このような歴史があります。

 

 自分としては、パンクの本質は、「社会の常識に囚われず、自分の価値観を優先する」ということだと思います。

 

 パンクロックを最初に始めた人は、「今の政府はゴミだ」と思ったはずです。

 

 そして、「今の政府が提示している価値観には従わず、自分の価値観に従いたい」と考え、自分の価値観を激しい音楽に乗せて主張しました。

 

 自分は、一番最初のパンクロックをリアルタイムで経験した世代ではありません。

 

 しかし、リアルタイムで経験はしていなくとも、そういったパンクロックの歴史は知っています。

 

 そのため、音だけはパンクロックの真似をしているけれど、自分の価値観をはっきり提示していないバンドを見ると、「これはパンクではない」と感じてしまいます。

 

 逆に、音としてはパンクっぽくなくても、強烈に自分の価値観を主張しているミュージシャンを見ると「これはパンクだ!」と感じてしまったりします。

 

 そう考えると、「パンクかどうか」というのは、音の面より、「自分の価値観をはっきり提示しているかどうか」が判断基準になるのだと思います。

 

 

 

 

 自分は、「パンク」と呼ばれる音楽を色々聴いてきましたが、「昔からずっとパンクだな」と強烈に思う日本のミュージシャンがいます。

 

 それが、「甲本ヒロトと真島昌利(マーシー)」です。

 

 彼らは、80年代には、「ザ・ブルーハーツ」というバンドをやっていました。

 

 ブルーハーツは、パンクロックバンドで、時に政治的なメッセージを歌に込めていました。

 

 そういった強烈でストレートなメッセージが多くの人に刺さり、ブルーハーツは大ヒットしました。

 

 しかし、バンドを続けるうちに、メンバー内の不和も出てきて、1995年にブルーハーツは解散します。

 

 その後、ヒロトとマーシーは、「ザ・ハイロウズ」というバンドを組みます。

 

 そのバンドでは、ブルーハーツとはガラッと変わり、政治的なメッセージをほとんど歌わなくなりました。

 

 しかし、音楽的な魅力が沢山あるバンドなので、根強いファンが付きます。

 

 ただ、残念ながら、2005年に解散してしまいます。

 

 その後、2006年に、ヒロトとマーシーは、「ザ・クロマニヨンズ」という新たなバンドを組みます。

 

 ここでも、歌詞に政治的なメッセージはできません。

 

 しかし、削ぎ落とされた力強いサウンドで人気を博し、2021年現在も、精力的に活動しています。

 

 確かに、ヒロトとマーシーは、ハイロウズ以降、政治的なメッセージをほとんど歌詞に込めなくなりました。

 

 特に、クロマニヨンズになってからは、政治的なメッセージを発信しなくなりました。

 

 世の中には、歌詞の政治性がなくなったことで、「ヒロトとマーシーは、もうパンクではない」という人もいます。

 

 しかし、自分は、政治的なメッセージが薄れてもなお、「ヒロトとマーシーは今でもパンクだ」と強烈に思います。

 

 なぜかというと、政治的なメッセージを歌わなくとも、歌詞で「自分の価値観」を強烈に主張しているからです。

 

 彼らは、クロマニヨンズを組んでからずっと、「成長することを最優先するのではなく、楽しむことを最優先する」というメッセージを主張し続けています。

 

 これが、今のヒロトとマーシーが一番大事にしている価値観なのでしょう。

 

 ただ、「成長することを最優先するのではなく、楽しむことを最優先する」というのは、今の日本社会の価値観から考えると、とんでもないことです。

 

 今の日本社会における常識的な価値観とは真逆のことを言っています。

 

 

 

 

 日本人は、学生の時は、「常に成長を目指して努力して、成績を上げること」を求められます。

 

 社会人になって会社に入ると、「常に成長を目指して努力して、売り上げを上げること」を求められます。

 

 仕事を辞めるまでは、「常に成長を求められる社会」とも言えます。

 

 そんな日本社会で、「別に成長できなくてもいいから、常に楽しいことをしたい」と言うのは、ある意味タブーです。

 

 そんなことを言うと「怠け者」「社会のお荷物」などと、周囲の人から罵倒されます。

 

 ですから、本心では「別に成長できなくてもいいから、常に楽しいことをしたい」と思っていても、周囲から罵倒されるのが怖くて、口に出せないという人も多いと思います。

 

 しかし、そういうリスクがあるにも関わらず、ヒロトとマーシーは、インタビューでそういった考え方を明言しています。

 

 「別に成長できなくてもいいから、常に楽しいことをしたい」と公言することは、実は、「めちゃくちゃパンク」なことだと思います。

 

 世間の考え方とは真逆ですが、批判を恐れず、「自分が良いと思う価値観」をはっきりと提示しているのですから。

 

 こういう発言を聞くと、「ヒロトとマーシーは、やっぱり今でもパンクだ」と改めて思います。

 

 そして、ヒロトとマーシーは、口だけでなく、行動でもはっきりと示しています。

 

 実際、クロマニヨンズは、成長することよりも、楽しむことを最優先しているバンドです。

 

 正直、クロマニヨンズの楽曲を聴くと、「音楽的な革新性はあまりない」と感じます。

 「パンクロック」「ハードロック」「ブルース」など、彼らが昔から好きな音楽の延長線上で音楽を作っている印象です。

 

 「どんどん、色んなジャンルの音楽のテイストを取り入れて、全く新しい音楽を作ってやろう」という気概は感じません。

 

 クロマニヨンズとハイロウズの音源を聴き比べると、「ハイロウズ時代の方が、音楽性の幅は広かった」と感じます。

 

 実際、ハイロウズの方が、色んなテイストの曲がありました。

 

 それを考えると、ハイロウズ時代に比べて、音楽的に成長しているとは言えません。

 

 むしろ「退化している」と感じるファンもいるかもしれません。

 

 ただ、「では、ハイロウズよりもクロマニヨンズの方が劣っているのか?」と言われると、そうとは言い切れません。

 

 クロマニヨンズには、「音楽性の幅は狭いかもしれないが、これでいいんだよ」と開き直っている潔さがあります。

 

 そういった潔い姿を見ると、つい、「かっこいい」と思ってしまいます。

 

 実際、ヒロトとマーシーの音楽の好みは、はっきり固まっているので、「無理に新しい音楽を取り入れる必要はない」と思っているのでしょう。

 

 ヒロトとマーシーは、バンド活動を長く行う中で、「技術的な上手さを追及したり、新しい音楽のスタイルを無理に取り入れると、楽しくない」と気づいたようです。

 

 それに気づいてから、「成長できなくてもいいから、楽しいことをする」ということを徹底するようになったようです。

 

 以前、インタビューで言っていましたが、クロマニヨンズのレコーディングは、他のバンドと比べて、非常に早く終わるようです。

 

 アレンジも事前にあまり練らず、「バンドで合わせて、それで良かったら、もうOK」というスタイルだということです。

 

 そのため、レコーディングも非常に早く終わり、ストレスもあまり感じないようです。

 

 彼らも、昔は、「より良い音源を作らなきゃ」と考え、アレンジをじっくり練ったり、録音にこだわって長い時間をかけたこともあったようです。

 

 しかし、それをやりすぎると、「作曲やレコーディング作業が苦痛になる」と気づいたようです。

 

 そこからは、「楽曲の完成度が多少落ちたり、音楽学的に成長できなかったとしても、楽しい方がいいじゃん」と考え、アレンジをじっくり練ったり、録音に長い時間をかけることを辞めたそうです。

 

 そして、「楽しくレコーディングすること」を最優先にしたということでした。

 

 実際、クロマニヨンズの新作音源を聴いても、「前とあんまり変わらないな」と思うことは多いです。

 

 アレンジも、昔どこかで聴いたものが多く、音の質感も、毎回あまり変わりません。

 

 ただ、毎回、「全力で楽しんで、自分たちのやりたいことをやっている」ということは、はっきりと伝わってきます。

 

 そのため、「前とあんまり変わらないな」と思ったとしても、「やっぱり素晴らしい」と感じてしまうのです。

 

 クロマニヨンズというバンドは、「音楽的な革新性がない」という面があるので、その点を批判する人もいます。

 

 しかし、自分たちが楽しいと思うことをして、それを「素晴らしい」と思ってくれるファンがいるのなら、成長できなかったとしても、もうそれで十分なのかなと思います。

 

 バンドとしての音楽性に成長がなかったとしても、「ミュージシャン自身が楽しんで、その楽しんでる姿を見てファンも楽しめる」のであれば、お互いにとって良いことだと思います。

 

 自分は、音楽は好きですが、音楽を作ってはいないので、ミュージシャンはありません。

 

 しかし、ミュージシャンでなくとも、ヒロトとマーシーの「世間と真逆の価値観だとしても、自分が良いと思った価値観を優先する」という「パンクな姿勢」には、とても刺激を受けます。

 

 そして、その姿勢には憧れます。

 

 日本社会では、それを実践するのは難しかったりしますが、「なるべくなら、自分が良いと思う価値観を最優先したい」という気持ちもあります。

 

 ヒロトとマーシーの、「常にパンクな姿勢」を見習っていきたいですね。