くるりの「ばらの花」という曲がありますが、この曲は、昔から大好きな曲です。
また、この曲は、くるりファンの中で、非常に人気の高い曲です。
「くるりの曲の中で、この曲が一番」というファンも多く、まさに「名曲」と言えるでしょう。
自分がこの曲と出会ったのは、19歳くらいの頃でした。出会った頃から「いい曲だな」と思い、ずっと聴き続けてきた曲です。
自分は、今は、アラフォー世代になってしまいましたが、改めて聴き返しても、「素晴らしい曲だ」と思います。
しかし、アラフォー世代になった今、じっくりこの曲を聴いてみると、「10代の頃には気づかなかった、この曲のすごさ」に気づかされました。
そして、それに気づくと、改めて「本当にすごい、名曲だ」と思うようになりました。
そこで、今回は、自分なりに、「ばらの花は、なぜ名曲なのか?」について、自分なりに分析してみました。
「ばらの花を聴いたことがない」という人のために、くるりの公式のYouTubeサイトに、「ばらの花」の動画がアップされているので、こちらに貼っておきます。
メロディ
この曲を聴いて、まず印象に残るのは、「メロディ」でしょう。
この曲のメロディは、マイナー調の、どこか切なさのある、美しいメロディです。
ただ、切なさはあるものの、どこか懐かしさも感じるようなメロディになっています。
コード
この曲のコードを見てみると、「7」や「9」といった「テンションコード」を多用しています。
テンションコードを多用しているおかげで、響きが単調にならず、複雑で繊細な響きとなっています。
歌詞
この曲は、歌詞も本当に素晴らしいです。
歌詞が載っているサイトを貼っておきます。
この曲の歌詞は、どこか抽象的で、あいまいです。ただ、全体的には、どこか切ない印象の歌詞です。
歌詞をじっくり聴いてみると、「君に会えない」「あんなに近づいたのに遠くなってゆく」「胸が痛む」といったフレーズが印象に残ります。
このことから、「大切な人との別れがあったのかな?」と推測することができます。
ただ、この歌詞では、「その、大切な人がどういう人か」「どういった別れがあったのか」といった具体的なことは、一切、語られません。
そのため、聴き手は、「よくわからないけれど、どうやら、大切な人との別れがあったようだ」と想像するしかありません。
しかし、歌詞の中で「あいまいな説明」しかしていないからこそ、聴き手の想像力は膨らみます。
そのため、聴き手によってこの歌詞の解釈は異なります。それにより、「自分なりの解釈」を楽しむことができます。
こういった、「想像する余地」を残した歌詞というのは、とてもいいなと思います。誰もが「この曲の、自分なりの物語」を作れるわけですから。
そして、このような曲調には、具体的な歌詞よりも、あいまいな歌詞の方が似合っていると思います。
タイトルの「ばらの花」という表記
「曲のタイトル」というのは、非常に重要です。タイトルによって、曲の印象が変わったり、曲の聴こえ方が変わることもあるからです。
この曲のタイトルは、「ばらの花」ですが、あえて「ばら」という文字が、平仮名になっています。ここが、重要なポイントです。
「薔薇の花」だと、どこか重い印象になります。
「バラの花」だと、ちょっとシャープすぎる印象になります。
しかし、「ばらの花」にすると、どこかあいまいさが出て、この曲の雰囲気に、絶妙にマッチします。
そういう意味では、あえて平仮名で「ばら」という表記にしたのは、本当に良いチョイスだなと感じます。
岸田さんの声質や歌い方
この曲を歌っているのは、当然ながら、くるりの岸田さんです。
岸田さんは、繊細でいて、どこか懐かしさのあるような声質の持ち主です。
この声質が、この曲の雰囲気に、すごく合っています。
また、「歌い方」もポイントです。
この曲で、岸田さんは、大きく歌い上げたりせず、淡々と歌っています。
この淡々とした歌い方が、心にじわじわとしみてくる感じがあります。
「あえて淡々と歌う」ということをチョイスしたのは、素晴らしいですね。
フルカワミキさんのコーラス
この曲のコーラスには、当時「スーパーカー」で活動していた、フルカワミキさんを起用しています。
この曲のコーラスにフルカワミキさんを起用するというチョイスが、絶妙です。
フルカワミキさんは、かわいさもありつつ、繊細ではかなげな声質の持ち主です。そういった声質が、この曲に絶妙にハマっています。
もし、この曲のコーラスに、フルカワミキさん以外の人を起用していたら、ここまでの名曲にはならなかったかもしれません。
それくらい、「フルカワミキさんをコーラスに起用した」というのは、重要なポイントだと思います。
音色
この曲の音色は、美しさもありつつ、どこか懐かしさもある音色です。
「はっきりクリア」というより、少しこもったような音色を使っています。
そういった音色が、この曲の雰囲気と合っています。
アレンジ
この曲は、一見シンプルに聴こえますが、アレンジがとんでもなく凝っています。
細部のアレンジに様々な仕掛けがほどこされており、それに気づくたびに、「すごい!」とうならされます。
そこで、ここでは、この曲にほどこされている「アレンジの仕掛け」について解説していきます。
キーボードのバッキング
この曲で印象的なのが、短音で弾かれる、キーボードのバッキングのフレーズです。
このバッキングのフレーズは、イントロから出てきて、この曲の全編にわたって鳴っています。
このバッキングのフレーズが、この曲の持つ「美しさ」や「切なさ」をうまく表現している感じがします。
ギターの逆回転
この曲を聴いていると、間奏部分で「フワフワした、なんか変な音」が入ってくることに気づきます。
これは、おそらく、ギターの演奏を逆回転して再生している音です。
この音が入ることで曲に、絶妙な浮遊感を与えています。
これが、逆再生でなく、普通のギターの音だったら、印象は全く変わっているでしょう。
この、「逆回転の音」が、曲の雰囲気にとてもよく合っています。
あえて「逆回転の音を入れる」というセンスには、脱帽します。
後半の盛り上がりについて
この曲は、後半になるにつれて、音色・コーラス・演奏の変化により、徐々に盛り上がりをみせる曲です。
そういった、「後半になるにつれ、盛り上がる仕掛け」が絶妙なので、その点について解説していきます。
後半に、キーボードの音色が変化する
この曲では、キーボードのフレーズが、全編にわたってバックで鳴っていると、前に述べました。
後半部分になると、そのキーボードの音が、オルゴールっぽい音色に変化しています。その音色の変化により、後半部分が、より華やかな印象になっています。
後半に進むにつれ、コーラスが厚くなる
曲の前半と後半を比べると、コーラスの部分が増えて、コーラスも厚くなっていることがわかります。
このコーラスが、後半の盛り上がりに一役買っています。
後半に進むにつれ、ドラムの手数が増える
この曲を聴く際、「ドラムの演奏」に注意して聴いてみてください。
すると、曲の前半と後半で、ドラムのフレーズが変化しているのがわかります。
前半は、手数が少ないですが、後半に進むに従って、ドラムの手数が、徐々に増えていることがわかります。
これにより、後半部分に、繊細で華やかな印象が加わります。
そして、手数が多くなっても、曲の雰囲気を邪魔しないアレンジになっているのが、素晴らしいです。
まとめ
「ばらの花がなぜ名曲なのか?」について、自分なりに、色々と解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
この曲は、「メロディが突出している」「ボーカルが突出している」など、「ある特定の部分が突出している名曲」というわけではありません。
「あらゆる要素が絶妙にうまく絡み合う」ことで、名曲になっている曲です。
この曲は、正直、派手な曲ではありません。この曲を、ギターの弾き語りで歌ったら「まあまあいい曲だね」で終わってしまうかもしれません。
この曲のメロディーやボーカルは、良いとは思いますが、正直言って地味です。
しかし、そんな地味なメロディーやボーカルに対して、職人的な緻密なアレンジを施すことで、曲をぐっと上のレベルに押し上げているのだと思います。
この曲を聴き込むと、随所に、「職人的な、細部への緻密なこだわり」があることがわかります。
この曲は、食べ物に例えると、「一見、普通に見えるけれど、素材や作り方に徹底的にこだわった醤油ラーメン」のようなものです。
そういったラーメンは、食べると懐かしさも感じてほっとしますが、じっくり味わうと、その旨みの深さに驚かされます。
この曲は、そういったラーメンのように、「素材の旨みだけに頼るのではなく、繊細な仕事をすることで、さらに素晴らしい味に仕立て上げる」といった雰囲気を持っている楽曲だと思います。
自分がこの曲に出会った頃は、「メロディの素晴らしさ」や「歌詞の素晴らしさ」に感心させられました。
しかし、年齢を重ねた今は、歌詞やメロディ以上に、「アレンジ」について、特に感心させられています。
このようなアレンジの丁寧で緻密な仕事ぶりは、本当に素晴らしいと思います。
この曲が、「ただの名曲で終わらない、不朽の名曲」と思われているのは、そういった緻密なアレンジがあってこそだと思います。
そして、この曲は、「繰り返し聴いても、なかなか飽きない」という特徴のある曲です。それは、「緻密なアレンジ」によるところが大きいと思います。
緻密なアレンジがあるからこそ、聴くたびに新たな発見があるため、なかなか飽きないのです。
この曲は、歌やメロディだけでなく、演奏やアレンジ面で、無数の聴きどころがある曲です。
一見シンプルに聴こえますが、細部は非常に凝っています。
この曲を既に知っている方でも、まだそこまでしっかり聴き込んでいないという方は、「曲のアレンジ」に注意して、再度聴いてみてください。
そうすると、曲の新たな魅力が再発見できると思います。
ベスト オブ くるり / TOWER OF MUSIC LOVER