僕には、昔からすごく好きなバンドがいます。
それが、「ザ・ブルーハーツ」です。
ブルーハーツは、80年代に人気になったバンドです。
解散したのが95年ですが、いまだに根強いファンがいるバンドです。
そんなブルーハーツの代表曲の一つに、「リンダリンダ」があります。
この曲のサビは、速いテンポの明るいメロディに、「リンダリンダ」という歌詞が乗ります。
そのため、サビだけ聴くと、「ノリのいい、能天気な、明るい曲なのかな?」と思ってしまうでしょう。
しかし、この曲をじっくり聴くと、「ただのノリのいい曲ではない」ということがわかります。
歌詞が秀逸で、非常に深い意味が込められています。
この曲の歌詞のすごいところは、実はサビ以外の部分にあります。
特に、冒頭の歌詞が秀逸なので、まずは、その部分を詳しく見ていきたいと思います。
ドブネズミみたいに
美しくなりたい
写真には写らない
美しさがあるから
この冒頭の歌詞では、一般的には、「汚い」と忌み嫌われる「ドブネズミ」のことを「美しい」と言っています。
そして、「美しい」と言うだけでなく、「ドブネズミみたいになりたい」と歌っているのです。これは、なかなか衝撃的な歌詞です。
そして、ドブネズミの美しさというのは、「写真には写らない美しさ」だと言っているのです。
ドブネズミについて歌っているのは、この部分だけではありません。後半では、こう歌われています。
ドブネズミみたいに
誰よりもやさしい
ドブネズミみたいに
何よりもあたたかく
ここでは、ドブネズミのことを「美しい」と言うばかりでなく、「やさしくて、あたたかい」とまで言っているのです。
これは、どういうことなのでしょうか。
一般的な常識にとらわれている人にとっては、よく意味のわからない歌詞でしょう。
しかし、自分にとっては、「この歌詞で描かれている感覚、すごくよくわかる!」と、胸に刺さるものがありました。
この歌詞についての解釈は、人によって様々だと思いますが、自分は、こう解釈しました。
ここで歌われている「ドブネズミ」というのは、「自分が辛い環境にいる分、人の痛みがわかる人」のことです。
世の中には、色々とうまくいかなくて、社会になじめずに、辛い思いをしている人がいます。
そういう人は、自分が辛い思いをしている分、「辛い思いをしている人の気持ち」がよくわかります。
そのため、他の人が辛い思いをしているのを見ると、そっと手を差し伸べたり、あたたかい言葉をかけたりすることがあります。そういう「やさしさ」を見せてくれると、同じように辛い思いをしている人は、救われたような気分になるでしょう。そういった場面で見せる「やさしさ」というのは、すごく「美しい」ことだと思うのです。
今の世の中には、社会になじめない人が増えてきています。例えば、「ニート」だったり、「ひきこもり」「ワーキングプア」「うつ病の人」などです。
こういった人達は、あまりお金を持ってないので、身なりはみすぼらしく見えるかもしれません。
しかし、そういう人達でも、一人一人をじっくり見ていくと、ダメな部分だけではなく、「素晴らしい部分」も見えたりします。そういう人達の心の奥底に「やさしさ」が隠れていたりするのです。
むしろ、自分としては、社会にうまくなじめている人より、なじめていない人の方が、「やさしい人」や「あたたかい人」の割合が多いと感じます。
そういう「やさしさ」というのは、社会的にはあまり評価されなかったりします。
しかし、社会的に評価されなくても、そういう「やさしさ」を持っているということは、それだけで素晴らしいと思うのです。
この歌詞を書いたのは、ボーカルの甲本ヒロトです。
この歌詞を見て、「甲本ヒロトは、『見た目ではわからない、内面の価値』をちゃんとわかっている人」なんだなと思いました。そんな甲本ヒロトの人間性は、素晴らしいと感じます。
そして、甲本ヒロト自身も、ここで歌われているような「ドブネズミ」なんだと思います。
ブルーハーツがヒットしたことで、甲本ヒロトは「富と名声」を手にしました。ある意味、カリスマ的な存在で、「甲本ヒロトに憧れている人」は、世の中に沢山います。
しかし、ブルーハーツがヒットする前までは、甲本ヒロトは、社会的に見ると「ドブネズミ」のような存在だったはずです。
甲本ヒロトは、若い頃から、ボロボロの格好をして、パンクロックを歌っていました。そのため、世間からは、「汚い格好をしている、チンピラ」のように映ります。そうなると、「あの人とはあまり関わらないようにしよう」と、「ドブネズミ」のように敬遠されることもあったと思います。
このように、世間から「ドブネズミ」のように、疎まれるパンクロッカーではありますが、じっくり話してみると、実は「やさしさ」や「あたたかさ」を持った人が多いのも事実です。甲本ヒロト自身も、そういうことを感じていたのではないでしょうか。
そして、甲本ヒロト自身も、「内面的に美しい人になりたい」という気持ちがあったと思います。そういった思いが、この「リンダリンダ」の歌詞に、にじみ出ているように感じます。
今回、この記事を書くため、改めて、じっくり「リンダリンダ」を聴き直してみました。
そこで改めて、「ここで歌われている、『ドブネズミ』みたいな人になりたいな」と思いました。
それは、「見た目だけではわからない、やさしさや、あたたかさを持った人」のことです。
そういう人になることは、なかなか難しいことだとは思いますが、そういう人を目指していきたいところです。
社会にうまくなじめなかったり、見た目はみすぼらしかったとしても、内面的なやさしさやあたたかさを持った、「人の痛みがわかる人」になりたいです。
THE BLUE HEARTS(デジタル・リマスター・バージョン)