場面緘黙症だった僕の、その後の人生

小学校時代に場面緘黙症を経験。社会に出た後も、仕事になじめずに苦しむ。社会にうまく適応できないという悩みあり。このブログが、同じような悩みを持っている方の参考になれば幸いです。

場面緘黙症の人の、脳の特性について

 自分は、小学校時代、場面緘黙症を経験しました。場面緘黙症とは、「家庭などの、本人が安心できる環境では話ができるのに、特定の社会的状況(学校、職場など)で話ができなくなる疾患」のことです。最近では、少しずつ知られてきたこの疾患ですが、一般的にはまだまだ知名度が低い疾患です。教育や療育に関わっている人には知られてきている言葉だと思いますが、一般的には、「場面緘黙症、何それ?」と言う人がほとんどだと思います。

 

 ここでは、当事者としての自分の体験と、言語聴覚士としての知識をふまえて、場面緘黙症の人の脳内で、どのようなことが起こっているのか解説していきたいと思います。

 

 まず、場面緘黙症となってしまう原因ですが、それは「学校という場に恐怖を感じてしまう」ことにより起こると思います。場面緘黙症になる子供というのは、大抵、性格は内向的です。おとなしくて、「見知らぬもの」や「慣れないもの」に対する恐怖心が強い傾向があります。「極端に怖がりな性格」だと言っていいでしょう。

 

 自分は、言語聴覚士の資格を持っていて、脳の仕組みに関する知識もあるので、それをふまえて、「極端に怖がりな性格」について解説します。脳の側面の内側には、「扁桃体」という、アーモンドのような形をした部分があります。ここは、人間の「感情」に関わる部分です。

 

 人間は、外部から刺激を受けると、扁桃体から「感情」が生み出されます。「感情」は、「本能」とも言いかえることができます。扁桃体は、人間の感情や本能に深く関わります。

 

 例えば、人から嫌味を言われたら、「嫌だな」と感じる人もいれば、「腹が立つ」と感じる人もいるでしょう。しかし、嫌味を言われたからといって、本能にそのまま従って、そそくさとその場から逃げ出したり、相手に殴りかかったりしたら、社会生活は遅れないでしょう。そこで、本能を抑えるために、人としての「理性」が必要になります。「理性」というのは、額の近くにある、「前頭前野」が担っています。前頭前野では「論理的に考えること」を行います。嫌味を言われて腹が立っても、「ここでかっとなって殴り掛かったら、後々自分が損をする」と前頭前野が合理的に考えて、怒っていないふりをして、その場をなんとか取り繕ったりします。

 

 場面緘黙症の人というのは、おそらく、生まれつき「扁桃体の、恐怖の感受性が強い」のだと思います。場面緘黙症の人は、「普通はそれほど恐怖を感じないような状況」であっても、恐怖を感じてしまいます。そのため、普通の人はさほど怖いとは思わないような学校という場で、必要以上に恐怖を感じてしまいます。

 

 場面緘黙症の人の脳内では、前頭前野からは、「学校で、ずっと黙っているより、友達と雑談した方が、学校生活もやりやすいよ」という指令も出ているでしょう。しかし、前頭前野からの指令よりも、扁桃体からの指令が勝ってしまいます。そのため、頭では「学校で話した方がいいのだろうな」とわかっていても、扁桃体からの「怖いから、下手に何かするより、何もしないでおけ。だから、学校では話すな」という指令に従って、話さないという選択をしてしまいます。

 

 場面緘黙症の人が学校で話さなくなってしまうのは、「恐怖を感じたことによる防御反応」といっていいでしょう。亀が、攻撃された時に、甲羅の中に身を隠すのと一緒です。場面緘黙症の人は、学校で話さないことによって、なんとか恐怖から身を守ろうとしているのです。

 

 楽しく学校生活を送れていた人にとっては、「なぜそこまで、学校で恐怖を感じるんだ?」と疑問に思うでしょう。しかし、よく考えると、他人は、ある意味で「怖い存在」です。他人は、同じ人間とはいえ、自分と全く考え方の違う人が沢山います。自分が良かれと思って言った発言でも、それで相手が気を悪くして、自分が攻撃されたりします。そういう、「自分とは違う他人」が沢山いる学校で発言するということは、実はすごく怖いことです。場面緘黙症の人は、その怖さを人一倍感じているからこそ、学校で喋れなくなるのです。

 

 そして、学校などの特定場面でずっと喋らないでいると、喋ることの恐怖感はさらに増します。なぜなら、たまに喋ったりすると、「珍しい、あいつが喋ってる」などと、周囲がからかったりします。そういう反応をされると、喋ることに対する恐怖感は一層強くなり、どんどん喋りにくくなります。これが、場面緘黙症が長期化しやすい理由です。

 

 このように見てみると、場面緘黙症になるかどうかというのは、環境面の影響もあるとは思いますが、それ以上に、「生まれながらの脳の特性」が深く関わっていると思います。

 

 


私はかんもくガール: しゃべりたいのにしゃべれない 場面緘黙症のなんかおかしな日常