場面緘黙症だった僕の、その後の人生

小学校時代に場面緘黙症を経験。社会に出た後も、仕事になじめずに苦しむ。社会にうまく適応できないという悩みあり。このブログが、同じような悩みを持っている方の参考になれば幸いです。

言語聴覚士として介護老人保健施設に勤務(1つ目)

 転職活動をして、老健から内定が出たため、老健で働き始めました。その老健には既に言語聴覚士が1名在籍していましたが、近いうちに退職することが決まっていたので、最初のうちは引継ぎをしながら業務を行いました。

 

 老健に入って、まず最初に衝撃を受けたのが、「看取り」についてです。自分が入った施設は、「看取り」をやっていました。

 

 老健というのは、基本的には、「病院と家との中間型施設」です。病院に入院して、退院期限がきてしまったけれど、家に帰ることが難しい人が、一時的に留まる施設というように位置付けられています。しかし、建前上はそうなっていますが、現実的には、家に帰ることが難しい方も沢山います。老健は、名目上は「一時的に留まる施設」となってはいるものの、現実は、何年も老健に留まっている利用者は多いです。

 

 そして、高齢の方も多いので、老衰などで死期が近くなり、「看取り」対応になる方もいます。看取り対応になると、無理な延命措置は行いません。その中で、なるべく苦痛が少なく、安楽に最後を迎えられるよう、職員は対応します。

 

 自分が病院に勤務していた時は、主に回復期の患者をみていたので、状態が悪くなった患者は、別の病棟に移されました。そのため、病院では、「死ぬ間際に、人が弱っていく様子」というのは、見たことがありませんでした。そのため、老衰であっても、「人が弱っていって、亡くなってしまう」という過程を見ることに、非常にショックを受けました。

 

 言語聴覚士も、「食事」の面で看取りに関わります。言語聴覚士は、普段、嚥下障害(呑み込みの障害)のリハビリを行っており、食事場面の観察もしています。「看取り対応」となるような人というのは、大抵、食事量が落ちてきます。そして、どんどん口から食べる量が減ってきて、口から十分な栄養量の食事を摂取できなくなると、亡くなってしまいます。

 

 看取り対応となった利用者の家族は、「最後くらい、おいしいものを少しでも食べさせてあげたい」と希望することがよくあります。しかし、飲み込みづらいものを無理に食べさせて窒息してしまうと、苦しみながら亡くなってしまったりします。また、食べ物が誤って肺に入ってしまうと、発熱したり、呼吸困難になって亡くなることもあります。なるべくなら、そういったことは避けたいところです。

 

 そういう時に、ご家族の話を聞いて、言語聴覚士の方で、「こういうものなら、苦しまずに食べられるかもしれません」と提案したりしていました。例えば、アイスクリームなどの窒息しにくいものを、舌の上で少しなめてもらうという形を取ったりしていました。そういう形であれば、窒息で亡くなるという可能性は低くできます。

 

 このように、何度も「看取り」を経験していく中で、自分の中でのショックは徐々に薄れていきました。これが「慣れ」というものでしょう。でも、人が亡くなってしまっても、それほど心が動かなかったりすると、「人として、これでいいのだろうか?」と、少し寂しい気持ちになることもありました。

 

 前任の言語聴覚士は、自分が入職してそれほど経たずに辞めてしまい、老健にいる言語聴覚士は自分1人になってしまいました。そこで、「言語聴覚士は施設で自分だけだから、頑張らないと」と思い、自分なりに頑張って仕事をしていました。そして、当初の予想通り、病院よりも老健の雰囲気の方が、自分には合っているようでした。また、入った当初はリハビリ室の雰囲気も良く、職員同士も仲が良かったので、比較的楽しく仕事ができていました。ただ、楽しく仕事ができる期間は、それほど長くは続きませんでした。

 

 この老健は、経営上の問題があり、そのせいか、職員がすぐに辞めていって、入れ替わりが激しい状況でした。そのため、「この人とは仕事しやすいな」と思う職員がよく辞めてしまったりして、そういう時はショックを受けました。しかし、働いているうちに施設に対する愛着も出てきたので、周りがどんどん辞めていっても、「この施設や利用者のため、もう少し頑張ろう」と思って仕事をしていました。

 

 しかし、この老健に勤務して3年が過ぎたあたりから、その心境に変化が出てきました。自分が入職した時にいたリハビリ室の職員はほとんど辞めてしまい、新しい職員が入ってきて、リハビリ室の雰囲気が変わってきました。自分がいた頃は、リハビリ室の職員同士は仲が良かったですが、その頃は、職員同士の争いが増え、雰囲気がギスギスしてきました。また、施設の経営者の方針も、段々と自分の考え方と合わなくなってきました。

 

 そして、老健というのは、なかなか利用者にリハビリを行っても、なかなか改善がみられません。そこで、「自分は、言語や嚥下のリハビリをしているけれど、意味があるのかな?」と思うようになりました。言語聴覚士の仕事に対して、モチベーションが上がらなくなりました。

 

 そういったことが重なり、メンタル的にかなりしんどくなってきて、「この職場でずっと続けるのは無理だ」と思うようになりました。そして、退職することを決意しました。退職の希望を上司に伝えると、「無責任だ」などと、責められたりしました。それにより、元々落ちていたメンタル面は、さらに落ちていきました。しかし、そういう対応をされたことによって、「やっぱりこの職場は、辞めた方がいいな」と改めて思いました。

 

 そして、なんとか辞めることができたものの、退職時は、上司とだいぶもめてしまったため、後味の悪い退職となってしまいました。結局、4年弱で、この施設を退職しました。


在宅・施設リハビリテーションにおける言語聴覚士のための地域言語聴覚療法